クルマ社会のデメリットは「渋滞」だけじゃない! 日本に公共交通が必要なのは「住民の足を守る」以上のメリットがあるからだ

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公共交通は単に「住民の足を守る」ためだけに必要なわけではない。その理由を解説する。

自動車がもたらす社会への負荷

渋滞のイメージ(画像:写真AC)
渋滞のイメージ(画像:写真AC)

 まず、自動車がもたらす外部不経済を理解しておこう。これは、端的にいえば、ドライバーは費用としてガソリン代のことぐらいしか気にしないであろうが、知らないうちに社会全体に負荷を与えているという事象である。

 具体的には、第1に、各地でみられる渋滞である。渋滞は、時間的なロスとして社会にコストとしてかかるうえ、渋滞解消のために新たな道路建設を行うと、さらにコストが膨らむことになる。ちなみに、鉄道と道路があるとき、鉄道のサービスを改善せずに道路を広げると、ますますクルマが増えて結果的に渋滞がひどくなるという逆説も、経済学は教えている(「ダウンズ・トムソンのパラドックス」)。日本の地方都市圏は、まさにそうした状況にあるといってもよい。

 第2に、環境負荷である。欧州では、グリーン・トランスフォーメーション(GX)戦略のど真ん中に公共交通シフトがある。日本でも運輸部門はCO2排出量の約18%を占め、自家用車が運輸部門の約46%を排出している(2020年度)。日本の場合、電気自動車による問題解決は語られるが、単にガソリン車を電気自動車に替えるだけでは、電力消費量が増える。

 第3に、交通事故である。交通事故死者数は年々減少しているとはいえ、その数(24時間以内)は、2022年で2610人、1日7人余りが亡くなっている。運転のプロでなくとも自由に移動できるという自動車の良さは、一方で事故を生む。従って、その対策にも相当の費用を費やすことになる。

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