西武池袋「ヨドバシ出店反対」 豊島区長の決意にひそむ“来春任期満了”という焦燥感
豊島区が消滅可能性都市になったワケ

さらに2016年には、グリーン大通りに隣接する南池袋公園がリニューアルオープンする。同公園がリニューアルされた理由は、2014年に日本創成会議が発表した消滅可能性都市に東京23区で豊島区がリストアップされていたことに端を発する。
日本創成会議は民間有識者によって組織されているが、座長を元総務大臣の増田寛也氏が務めていた。そのため、消滅可能性都市の発表は政府や地方自治体を大きく揺るがした。
豊島区が消滅可能性都市とされた理由は、若い女性が少ないことだった。豊島区は巻き返し策として「女性にやさしいまちづくり担当課」を新設。民間から女性課長を起用し、女性目線のまちづくりを開始した。
その初手が、“安心して子供を遊ばせられる公園づくり”だった。南池袋公園は、なによりも女性が利用しやすいようにトイレを清潔に保つことを心掛けた。当初は区民をターゲットにした公園整備だったが、オープン後からしばらくすると評判を聞きつけた来街者が押し寄せるようになる。これには豊島区も想定外だったようだが、南池袋公園はたちまち一大スポットに変貌した。
これらに触発されて、豊島区は2018年からはグリーン大通りの再整備にも着手。グリーン大通りに面した生育不良の樹木は植え替えられ、老朽化した照明も取り換えられていった。
こうしたグリーン大通りとその周辺の整備を見れば明らかなように、豊島区にとって池袋駅東口から延びるグリーン大通りはまちづくりの背骨ともいえる部分にあたる。長い歳月をかけて整備してきたグリーン大通りへの政策が、ようやく実を結ぼうとしていた矢先に、「顔」の部分にあたる西武池袋本店に理念・政策が異なる家電量販店がオープンすることになったのだから、これまで積み上げてきた豊島区の苦労は水の泡になる。
ここまで説明すれば、なぜビックカメラやヤマダデンキはよくてヨドバシカメラがダメなのかを理解できるだろう。ヨドバシカメラがNGなのではない。
「西武池袋本店の低層階にヨドバシが入ること」
がNGなのだ。
つまり、グリーン大通りに干渉しない立地での出店や不特定多数の来街者の目につきやすい低層階以外なら問題ないということになる。実際、ビックカメラもヤマダデンキも池袋駅前に立地しているが、豊島区が進めるグリーン大通りの計画には干渉しない位置にある。わずかな位置のズレだが、その差は大きいのだ。