西武池袋「ヨドバシ出店反対」 豊島区長の決意にひそむ“来春任期満了”という焦燥感

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豊島区の高野之夫区長が、西武百貨店池袋本店の低層階にヨドバシカメラが出店することに反対を表明したことが話題になっている。その背景にはいったい何があるのか。

西武鉄道社長に嘆願書提出

グリーン大通りから眺める西武池袋本店(画像:小川裕夫)
グリーン大通りから眺める西武池袋本店(画像:小川裕夫)

 12月16日、東京都豊島区の高野之夫区長は記者会見を開き、池袋駅東口に立地する西武百貨店池袋本店の低層階にヨドバシカメラが出店することに反対を表明。西武鉄道の後藤高志社長に嘆願書を提出したことを明らかにした。

 西武百貨店は西武鉄道のグループ会社として発足したが、後に鉄道系をメイン事業にする西武鉄道グループと流通小売りをメイン事業にする西武流通グループ(後のセゾングループ)とに分離した。

 分離後も両社はシナジー効果を発揮していたが、2004(平成16)年に西武百貨店などはセブン&アイグループのそごう・西武に列し、2022年11月にはアメリカ投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループ&ヨドバシカメラホールディングス連合の手に渡った。こうした経緯もあり、西武百貨店にヨドバシカメラが出店するといわれてきた。

西武池袋本店は「池袋の象徴」

豊島区の高野之夫区長(画像:豊島区)
豊島区の高野之夫区長(画像:豊島区)

 高野区長が西武池袋本店に関する嘆願書を西武鉄道に提出しても意味がないとの指摘もあるが、いまだ西武鉄道が西武池袋本店の土地・建物の一部を所有している。それを踏まえれば、高野区長が西武鉄道社長に嘆願したことは決して無意味ではない。

 豊島区は

「西武池袋本店は池袋の象徴であり、西武百貨店の前は多くの人が行き交う。低層階は不特定多数の人が目にするから、街のイメージにも直結する。西武に入居するブランド店がヨドバシカメラに替わってしまったら、池袋の街全体にもさまざまな影響が出る」

としている。その変化による影響は、池袋にとってよい面もあれば悪い面もあるだろう。しかし、いくら地元の豊島区とはいえ、民間企業の経済活動に対しての強制力はない。高野区長が提出した嘆願書は、あくまでも地元自治体からのお願いにすぎない。

 西武池袋本店の近くにはビックカメラ池袋本店やヤマダデンキ日本総本店など、家電量販店の旗艦店ともいえる巨大店舗が櫛比(しっぴ。すきまなく並ぶさま)している。そのため、

「なぜ、ビックやヤマダはいいのに、ヨドバシはダメなのか?」

といった疑問を抱く人もいるだろう。また、豊島区とビックカメラは2022年10月に「豊かなまちづくりのためのパートナーシップ協定」を締結したばかりで、それをもって「商売敵のヨドバシを排除したいのだろう」といった臆測も飛ぶ。

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