西武池袋「ヨドバシ出店反対」 豊島区長の決意にひそむ“来春任期満了”という焦燥感

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豊島区の高野之夫区長が、西武百貨店池袋本店の低層階にヨドバシカメラが出店することに反対を表明したことが話題になっている。その背景にはいったい何があるのか。

2019年から始まった「IKEBUS」

IKEBUS(画像:写真AC)
IKEBUS(画像:写真AC)

 池袋LRT構想は幻になりつつあるが、他方で豊島区は2019年から池袋の街を周遊するIKEBUSの運行を開始。IKEBUSの最高時速は19kmで、“人にやさしい 環境にやさしい グリーンスローモビリティ”をうたい文句にしている。

 IKEBUSは単なる移動手段ではなく、人とまちをつなぐことを主眼に据えている。昨今、ウォーカブルシティ(= 歩きやすいまちづくり)を指向する市町村は増えているが、池袋LRTやIKEBUSは、まさにウォーカブルシティの概念を先取りした交通政策でもあった。

 では、そうした歩きやすいまちづくりと西武池袋本店の低層階にヨドバシカメラが入居することと、どんな関係があるのか。

 池袋LRTを盛んに推進していた当時、豊島区は「池袋駅東口駅前広場・グリーン大通り沿道景観形成特別地区」を策定し、池袋駅東口から真っすぐ延びるグリーン大通りのまちづくりに関しての指針をまとめている。同指針では、

・歩行者に圧迫感や威圧感を与えないように努める
・壁面の位置などの工夫により、敷地内に店舗等のあふれ出しの空間を確保するよう努める
・駅前広場あるいはグリーン大通りに建築物の顔 が向くよう計画する
・駅前広場に面して歩道と一体となったオープンスペースの確保に努める

といった文言が盛り込まれている。

 この文言だけだと概念的なのだが、同指針に基づいた具体例としては、池袋東口からグリーン大通りにかけての店舗構成が挙げられるだろう。グリーン大通りに面したビルの多くは、一階をカフェや飲食店にしている。

 実は、このグリーン大通りに面したビル一階の店舗に関して、事前に出店情報をつかんだ豊島区が街のイメージに合わないという理由で「考え直してもらえないか」といったお願いをしていたことがある。逆に、イメージに合うような店舗を誘致していたこともある。

 とはいえ、行政が企業の経済活動を決めることはできない。豊島区のお願いを受け入れない店(企業)もあった。それでも、豊島区は「とにかく店が並べば、街がにぎやかになる。経済的に潤う」という安易な考え方で店を誘致しなかった。周到にまちづくり計画を練り、イメージに合わないような店には「まずは話し合いをしてみる」という姿勢を貫き、面倒な交渉事にも時間と労力を割いた。

 そして、2013年と2014年には池袋駅東口からグリーン大通りにかけての街路でオープンカフェやマルシェの社会実験を実施するところまでこぎ着けた。

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