テスラでもトヨタでもない――世界EV市場の約3分の2を押さえる“見えない勝者”の正体、なぜ主導権はここまで変わったのか?
政策変動とEV投資の見直し
トランプ米大統領による関税の変更や、EVへの補助金の打ち切り、環境規制の見直しが重なり、自動車各社はEV投資の計画を相次いで後ろ倒しにしている。政策の動きが読みづらくなり、事業計画の前提そのものが揺らぐ状況がはっきりしてきた。
日産自動車は2028年に福岡県で建設予定だったLFPバッテリー工場の中止を決め、EV戦略の見直しを進めている。あわせて2027年のEV生産比率を従来より下げ、ガソリン車の比率を高める方針を示した。需要の弱さに合わせて投資を抑え、資金の流れを保つための判断だ。
GMも2026年1月8日にEV関連投資の一部を見直した。その結果、2025年第4四半期決算では60億ドルの損失を見込んでおり、このうち42億ドルは供給先との契約解消や和解金に充てられる見通しだ。2035年までにエンジン車の販売を事実上終えるという目標については、2026年3月時点で正式な撤回はない。ただ経営トップは、需要に応じて対応を変える姿勢を示している。
さらにアルティウム・セルズは、LFPバッテリー工場の一部をEV向けからエネルギー貯蔵システム(ESS)向けへ転用する方針を決めた。背景には、人工知能の広がりにともなうデータセンターの増加がある。電力需要の伸びに供給が追いつかず、変動の大きいEV市場よりもESS市場の方が収益性と先行きの面で優れると判断した形だ。自動車メーカーがエネルギー管理の領域へ比重を移しつつある動きでもある。
一方で、リチウム価格は過去にない高い水準にあり、今後も高止まりが続く見方が出ている。資源の供給が需要の伸びに追いつかない状況は、中国を含む供給側にも影響を及ぼしている。価格の引き下げと走行距離の改善を同時に実現できなければ、市場の広がりは難しい局面にある。各社は変化の大きい環境への対応を迫られている。