テスラでもトヨタでもない――世界EV市場の約3分の2を押さえる“見えない勝者”の正体、なぜ主導権はここまで変わったのか?

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EV市場は政策の揺れと資源制約に直面し、投資減速が広がる一方で、中国勢のLFP優位とGMのLMR実用化が対照をなす。電池技術の選択が価格構造と供給網を左右し、業界勢力図を塗り替えつつある。

LFP電池の台頭と中国優位の固定化

 リン酸鉄リチウム(LFP)型リチウムイオンバッテリーは、中国で大量生産が進む電池である。リチウムと鉄、リン(LiFePO4)を主な材料とし、ニッケルやコバルトといった希少金属をほとんど使わない。そのため資源面での制約が小さく、製造費用も抑えやすい特徴を持つ。こうした性質を背景に性能改善が進み、2020年以降の電池産業の構造は大きく変わった。

 中国企業の市場占有が進んだだけでなく、LFPは大衆向けEVの標準に近い位置を占めるようになっている。その結果、他国メーカーは中国の知的財産や供給網に依存せざるを得ない場面が増えた。鉱山開発から材料加工、回収までを政府支援のもとで一体的に進める体制は、工程ごとにわかれた西側諸国の体制と比べて、コスト面で差を広げている。

 一方で、LFPは従来のリチウムイオン電池と比べて電力量が小さく、車載用途では弱点もある。大きな力を一度に出しにくく、走行距離も短くなる傾向がある。この課題への対応と車両価格の引き下げ、さらに中国優位の市場構造への対抗として、GMとLGエナジーソリューションは合弁会社アルティウム・セルズを立ち上げた。他国に偏った技術の流れに対抗し、主導権を取り戻すねらいがある。こうした動きによって、EV向け電池の開発や採用は今後さらに広がり、技術の選択肢も増えていく見通しだ。

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