テスラでもトヨタでもない――世界EV市場の約3分の2を押さえる“見えない勝者”の正体、なぜ主導権はここまで変わったのか?
EV市場は政策の揺れと資源制約に直面し、投資減速が広がる一方で、中国勢のLFP優位とGMのLMR実用化が対照をなす。電池技術の選択が価格構造と供給網を左右し、業界勢力図を塗り替えつつある。
LFP依存と米国EV普及の足踏み
GMはバッテリーの化学構成や形状を複数にわけ、自社技術を市場へ広げやすい環境を整えている。まずは本格的な次世代電池を投入する前段階として、LFPバッテリーを搭載したEVを米国市場に広げる方針だ。新技術が整うまでの空白を埋め、市場の立ち位置を保つための暫定的な動きでもある。その始まりとして、2026年内にこの構成を採用したシボレー「ボルトEV」が販売される見通しだ。
ただ、LFPの基本特許は中国の企業や大学の連合が持っている。そのため米国内で生産しても、知的財産の使用料を通じて利益が中国側に流れる構図からは抜け出しにくい。最初は中国のCATLから直接輸入し、2027年末以降に米国内生産へ移す計画だが、供給網における中国の強い影響は改めて浮き彫りになる。
米国全体でEVを広げるには課題が多い。2025年の販売台数は前年から2.4%の増加にとどまり、充電設備の整備も追いついていない。充電インフラは投資の回収までに4~5年かかり、設置の基準も厳しい。さらにトランプ政権による環境規制の緩和や補助金の縮小は、実質的な車両価格を押し上げ、市場の伸びを抑える要因となっている。
一方で2026年の中国では、LFP電池を積んだ車が市場の過半を占め、急速充電網の整備も進んでいる。現地メーカーは走行距離の短さを充電性能の強化で補い、需要の拡大につなげている。こうした環境整備が移動の使い勝手を高め、中国市場の優位性を一段と強めている。