BEV・PHEV・FCEV 結局どれが「使える」のか? 電動走行距離と価格帯から違いを探る

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欧州議会が発行した文献を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。第2回は、世界市場の趨勢と併せてEVの種類別の特徴を考える。

電力化推進の必要条件は何か

■要因条件(利用可能な自然、資本、人的資源)

 今後の電動化推進のために必要な条件はいくつかある。

(1)人的資源

・技術と技能:化学と材料分野でバッテリー、充電と新材料を研究する科学者、電気、電子機器と電気化学の技術者、電気システムとバッテリーの保守技能者が必要。

・雇用の維持:エンジン関係の雇用が失われ、電動モビリティ関係の雇用が増える。長期的に両者が相殺されるのかどうかについては両論あるが、電動関連労働力の育成には時間がかかるため、途中段階では失われる雇用が新たな雇用を上回る期間が必ずあるだろう。

・インフラ:充電網と再生可能電力の拡充は重要な課題だが、いつまでも優遇策に依存しているようでは大規模な発展は難しい。

(2)原材料(リチウムLi, ニッケルNi,コバルトCo)

 欧州はBEV用バッテリーの原材料を中国からの輸入に頼らざるを得ない。供給不足と価格の上昇、製造や輸送時のCO2排出など、さまざまな課題が伴うが、代替供給先を確保する戦略は見えていない。台当たり使用料の低減とリサイクル率の拡大を推進する必要がある。

■需要条件

 EV(BEV + PHEV)化をけん引する需要と妨げる要因は何だろう。

(1)産業の成長促進

・政府レベル:EV化は石油の輸入依存度を下げ、電動モビリティへの転換が製造とサプライチェーンの持続可能な革新を生み、成長と雇用を創出する、と期待する政府は多い。現在、各国政府は、BEV市場を育成するためのさまざまな優遇策を展開している。

・消費者レベル:例えば、消費者の環境意識高揚がBEVを購入する最大の理由の一つとなっているが、本音では下記のような理由が主だろう。

 ・ガソリン車やディーゼル車より静か
 ・維持費が安い
 ・化石燃料の価格が上がれば、EVは安価なモビリティーとなる
 ・電気モーターはエンジンに比べて高回転使用時の故障が少ない
 ・EVは自宅で快適に“給油”することが可能

 デロイットの調査では、EVに関心を持つ最大の動機は気候変動への懸念だが、今後EVを大規模に展開するためには燃料費の安さが重要だ。

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