BEV・PHEV・FCEV 結局どれが「使える」のか? 電動走行距離と価格帯から違いを探る
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- 自動車, EV, カーボンニュートラル, 脱炭素, BEV, PHEV, FCEV, EU自動車産業の将来を読み解く
課題は充電インフラと技術投資の不足
これは文字通りの燃料費だけではなく、購入費、維持費、リサイクル費も含めた「総所有コスト」と解釈すべきだろう。優遇策への期待も高いが、税金が原資の優遇策が無くならなければEVは主流にはなれない。
(2)採用への障害
・充電インフラ
EV化が進んでいる北欧諸国は極寒冷地域のため、ブロックヒーター(オイルの凍結を防止するために夜間エンジンに装着される電気ヒーター)用の電源が、自宅や駐車場にありBEVの充電にも利用できる。
高速道路100kmあたりの公共急速充電器(22kW以上)の口数は1200以上と5年前の約5倍に急増し、EU全体の26、ドイツの70をはるかに上回る。EUの充電ステーションは全体の4分の3がオランダ、フランスとドイツに集中しており、加盟国間でインフラ整備に偏りがある。
「フィット・フォー55」が決定すればEU内に約600万か所の公共充電設備が必要になると欧州委員会ECは推計しているが、現状はまだ22万5000か所しかない。理由は採算性の見通しが立たないためで、民間主導ではこれ以上進まない。
欧州委員会ECは、燃料インフラの整備に向けて「フィット・フォー55」政策パッケージの一つである現行の「代替燃料インフラ指令」(加盟国政府のみに適用)を、「代替燃料インフラ規則」(政府、企業と個人に直接適用)に変更し、原則として充電設備を60km間隔、水素ステーションを150km間隔で整備することを加盟国に求める提案を行った。
・BEV技術への投資
これまで、自動車会社は窒素酸化物NOxや粒子上物質PMなどの汚染物質排出と燃費(CO2)の双子の規制に対応するため、エンジン開発に多額の投資をしてきた。政府の優遇策があってもEV特にBEVは同等のエンジン車よりも高価であり、消費者の購買意欲に限界があることから、投資の転換に消極的な自動車会社もある。
一方、遅れて自動車産業に参入し、エンジン技術の蓄積が無い中国にとっては逆転の機会であり、人材や投資のEV開発への転換には積極的だ。
この状況を打破するために「フィット・フォー55」が提案された欧州では、環境技術に対する消費者の意識も高まってきた今が「EVへの転換点」だと解釈している。
ガス電力市場規制局Ofgemの最新調査によると、欧州の消費者の4人に1人は今後5年以内にEVの購入を計画し、コンシューマレポートの調査によると、米国の運転者の71%は将来電動車の購入を検討し、その約3分の1が次にEVを購入することを検討している。