BEV・PHEV・FCEV 結局どれが「使える」のか? 電動走行距離と価格帯から違いを探る

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欧州議会が発行した文献を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。第2回は、世界市場の趨勢と併せてEVの種類別の特徴を考える。

電力網グリッドの課題と機会

BEVシェア100%時の国・地域別の総電力需要増加の試算(画像:大庭徹)
BEVシェア100%時の国・地域別の総電力需要増加の試算(画像:大庭徹)

 EVの台数が増加したときの電力網の課題はどうだろう。

 マッキンゼーはドイツのEVシェアが40%になっても総電力需要は6%程度しか増加しないと予測するが、電力需要のピーク時間とEVの地理的な使用状況を考量する必要がある。EVの駐車と充電ステーションの密度が高い地域では、変電所の能力を容易に超え、送電企業は多額の投資を迫られる可能性がある。

 欧州委員会ECは2035年にBEVが100%になることを目指すならば、BEVが40%ではなく100%時の電力需要の予測を示すべきだ。

 BEVが100%となった場合の試算結果を上図に示した。欧州では、再生可能エネルギー増強に伴う電力網への巨額の投資は今のところ消費者が負担しており、2030年までの世界の総費用はBEV1台当たり約53万円となる。

スマート充電V1Gと車両給電V2G

V1GとV2Gを組み合わせることによる、スマートグリッドと呼ばれる次世代送電網のイメージ(画像:The Smart Grid Could Hold the Keys to Electric Vehicles. IEEE)
V1GとV2Gを組み合わせることによる、スマートグリッドと呼ばれる次世代送電網のイメージ(画像:The Smart Grid Could Hold the Keys to Electric Vehicles. IEEE)

 例えば夜間に自宅でBEVを普通充電する際、インターネットにつながった充電器があれば、地域の電力会社がリモートでオン/オフすることにより地域送電網全体のバランスを取りながら、翌朝までに満充電とすることが可能となる。これがスマート充電V1Gだ。これにより、自宅や会社での夜間普通充電が増えれば電力網グリッドの増強費用も削減できる。

 電力は蓄えられないという特徴がある。従って電力需要の少ない夜間や休日に発電し、昼のピーク電力に備えるためには蓄電の仕組みが必要になり、水力発電の揚水発電がその一例だ。

 太陽光や風力発電の場合は、自然に依存する出力変動を平均化するためにも専用の蓄電システムは必須だ。BEVが搭載するバッテリーを蓄電システムとして電力網に給電することも可能で、このシステムを車両給電V2Gと呼ぶ。

 V1GとV2Gを組み合わせると上図のスマートグリッドと呼ぶ次世代送電網となり、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる。この中でEVのバッテリーは蓄電システムとして機能する。

 現在、欧州ではドイツのみが電力ピーク時のための蓄電システムが無く、消費量の1%に相当する風力エネルギーを捨てている。これをEVのバッテリーに蓄え、電力ピーク時に(EVがスマートグリッドにつながっていれば)電力網に電力を供給することができる。

 また、EVのバッテリーに蓄えられた電力は、災害時の非常用電源としても利用できる。

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