BEV・PHEV・FCEV 結局どれが「使える」のか? 電動走行距離と価格帯から違いを探る

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欧州議会が発行した文献を題材として「自動車分野の未来」を概観するシリーズ企画。第2回は、世界市場の趨勢と併せてEVの種類別の特徴を考える。

「フィット・フォー・55」対応戦略

自動車メーカー別2021年CO2目標達成状況 2020上半期(画像:T&E Mission Almost Completed)
自動車メーカー別2021年CO2目標達成状況 2020上半期(画像:T&E Mission Almost Completed)

 EUおよび国際的な自動車会社は、欧州委員会ECが欧州市場で販売する新車に課す排気ガス規制によって縛られる。

 CO2排出規制値未達に対する罰金が、EVの販売増加に要する費用を大幅に上回ることが明らかなため、欧州自動車産業はEV(BEV + PHEV)を受け入れてラインナップの拡大を急ぐ以外に選択肢はない。

 このPHEV戦略に対して「第2のディーセルゲート」の発生を懸念する声がある。

 世界的に乗用車からSUVへの移行が進んでいるが、乗用車から大きく重いSUVに代わることで増加するCO2排出量は電動化やエンジン改良で削減したCO2排出量を上回っている(2016~2019年発売の新車のCO2排出量は増加している)のが実情で「法規より顧客の要望が優先」という考え方は変わっていないようだ。

 2020年10月に輸送と環境T&Eが、実走行時と認証試験時のCO2規制排出量を比較する実験を行ったところ、試験したBMW X5、ボルボXC60、三菱アウトランダー全てが実走行時の排出量が認証試験時を28~89%上回り、BMWの乖離(かいり)が最大であった。

 VWのディーゼルゲートと違い、この結果に違法性は無く、バッテリーの充電状態などのバラツキをどこまで反映するかという試験制度の問題であるため、ユーロ7欧州排出ガス規制では実走行時の排出量を測定するRDE試験の追加が検討されている。

 EUは、PHEVは過渡的な技術であり、2025年までにバッテリーコストが低減してBEVの価格がPHEVと同等になれば、BEVは補助金や政策の支援に頼ることなく販売を拡大する、と期待するが、楽観的過ぎないか。

 充電インフラ拡充、バッテリーのリサイクル、再生可能電力の安全な供給、中国や米国のBEVとの競争など、課題は山積だ。

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