トヨタは「正しかった」のか? ハイブリッド再評価と「マルチパスウェイ」の真価【短期連載】「2035年エンジン車禁止」という幻影(3)

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EV戦争の先頭に立つはずの欧州市場で、日系メーカーは依然として苦戦を強いられている。2022~2025年でHVは124万台増と圧倒的成長を示す一方、BEVは58万台増にとどまる。豊田章男氏が掲げた「マルチパスウェイ」の戦略は、PHV・HVで空白期間を埋める現実解として再評価されつつある。レンタカー市場や全固体電池など、次世代の転換点も絡み、欧州での戦略柔軟性が日系メーカーの勝機を握る。

電動化単線論の揺らぎ

EU本部(画像:Pexels)
EU本部(画像:Pexels)

 2021年に掲げられた「2035年エンジン車販売禁止」という野心的な目標は世界を震撼させた。だが、わずか数年でその梯子ははずされた。2025年12月16日、 欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会が発表した「35年以降のエンジン車容認」という事実上の撤回案。これは、理想に燃えた欧州が現実の前に折れた歴史的転換点といえる。中国製EVの猛追と、自国メーカーの悲鳴、そしてエネルギー安保の崩壊。本短期連載では、この「EVシフト狂騒曲」を地政学、産業競争力、消費者心理の三つの視点から総括する。欧州の戦略的敗北と、あらためて評価されるトヨタのマルチパスウェイ戦略。インフラの壁や政治的妥協の先に、自動車産業が辿り着く脱炭素の新たな均衡点を探る。理想から現実への回帰を通じ、次なる競争の行方を占う。

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 2020年ごろからバッテリー式電気自動車(BEV)時代の到来が強く意識されるようになり、2023年3月にはEUが2035年のエンジン車販売禁止方針を打ち出した。こうした流れのなかで、日本の自動車メーカーは批判を受けながらも、電動化の進路を単線化しない「マルチパスウェイ」を掲げ続けてきた。

 それから2年半が過ぎた現在、かつて電動化を先導してきたドイツの自動車メーカーの間でも、同様の考え方を志向する動きが目立ち始めている。エンジン車を巡る環境が変化するいま、彼らはこの転換をどう受け止めているのか。

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