トヨタは「正しかった」のか? ハイブリッド再評価と「マルチパスウェイ」の真価【短期連載】「2035年エンジン車禁止」という幻影(3)
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EV戦争の先頭に立つはずの欧州市場で、日系メーカーは依然として苦戦を強いられている。2022~2025年でHVは124万台増と圧倒的成長を示す一方、BEVは58万台増にとどまる。豊田章男氏が掲げた「マルチパスウェイ」の戦略は、PHV・HVで空白期間を埋める現実解として再評価されつつある。レンタカー市場や全固体電池など、次世代の転換点も絡み、欧州での戦略柔軟性が日系メーカーの勝機を握る。
BEV急拡大下での戦略修正

2021年12月、テスラの台頭を背景にBEVが急速に広がるなか、トヨタは自社のBEV戦略を修正した。2030年におけるBEVのグローバル販売台数を年間350万台と設定し、レクサスでは同年までに全カテゴリーでBEVのフルラインナップをそろえる方針を示した。あわせて、欧州、北米、中国ではBEV比率100%を目指し、グローバルで年間100万台の販売を掲げた。電池関連の新規投資額も、従来の1.5兆円から2兆円へと引き上げた。
当時のグローバル販売台数は約950万台であり、そのうち350万台をBEVとする計画は、全体の約3分の1に相当する。数値としては十分に挑戦的だったといえる。しかし、世界のマスメディアの反応は冷ややかだった。批判の矛先はトヨタに限らず、BEVへの転換に慎重な日本の自動車メーカー全体に向けられ、「出遅れている」と評する論調も目立った。
そうした逆風のなか、当時社長だった豊田章男氏はBEV戦略の発表会で、市場の動向を見極めながら生産の種類や量を柔軟に変える重要性を強調した。正解が見えにくい時代だからこそ、多様な選択肢を残す必要があるという考え方である。将来を正確に予測することよりも、変化に迅速に対応できる体制を整えることが重要だとし、世界的なBEV一辺倒の流れに同調しなかった。
この戦略は、世界市場に向けてトヨタが示した
「現実的な落としどころ」
だったとみることもできる。批判を受けることは、当初から織り込んだうえでの判断だった可能性が高い。その姿勢は、短期的な評価よりも中長期の柔軟性を重視する「戦略的忍耐」といえるだろう。EUが2035年のエンジン車販売禁止方針を見直す姿勢を示した現在、当時の判断は結果として先見性を帯びて見える。