「ソニー撤退」「EV台頭」 なぜCESは“家電の祭典”をやめたのか? 技術主権の“下剋上”が始まった
「家電見本市」の終焉と地殻変動

2026年1月6日から9日までの4日間、米国・ラスベガスにおいて、全米民生技術協会(CTA)が主催する世界最大のテクノロジー見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES) 2026」が幕を開ける。
CESは、1967年にニューヨークで産声を上げ、1995年からは毎年1月にラスベガスで開催されてきた。かつては家電業界の関係者が一堂に会する「発注の場」として機能しており、完成品メーカーが製品を提示し、流通業者や小売業者が買い手として情報優位性を持つ構造が成立していた。
当時は製品そのものに付加価値が集中していたため、流通側が価格決定権を握り、業界をけん引していたのである。こうした環境では、技術の差別化は完結した製品として評価され、内部の部品やソフトウェアは製造コストの一部として処理されるに過ぎなかった。
大手企業は巨大な出展ブースを構えて集客に心血を注ぎ、大々的なプレス発表や基調講演を通じて消費者のブランド想起を独占してきた。注目度が資金力のある大企業に集中するこの構図は、長年にわたって業界の定石とされてきた。
会期中のメディア露出が短期間での広告効果に直結し、投下した費用に対するリターンも明確であったため、出展規模は市場での支配力を示す指標となった。各社は競うように広大な面積を確保し、視覚的なインパクトを重視した装飾によって自社の存在感を誇示してきた。
しかし、現代においてこの形式が曲がり角を迎えたのは、産業の付加価値がハードウェアの組み立てから、その制御を司る知能や提供される体験へと移行したからに他ならない。完成品が主役だった時代から、それらを構成する技術レイヤーの重要性が高まる構造変化が起きている。かつてのように「箱」としての製品を並べるだけでは、産業の最前線を示すことが困難になっているのである。