世界が追いつけなかった「日産」の真実? リーフとAESCに見る「早すぎた挑戦」の代償とは【リレー連載】頑張っちゃえ NISSAN(6)

キーワード :
, ,
日産はEV先駆者として2010年リーフを投入したが、航続280kmや370万円の高価格が市場の理解を超え、後発組に追い抜かれた。e-POWERやe-4ORCEなど独自技術で快適性を極め、尖り続ける姿勢こそ、日産の真価である。

市場と技術のズレ

日産自動車のロゴマーク(画像:時事)
日産自動車のロゴマーク(画像:時事)

 かつて世界を席巻した日産は、今また大きな岐路に立っている。EVシフトの遅れ、米中市場での苦戦、巨額赤字――逆風は強い。しかし新型リーフやマイクラEVの投入、ハイブリッド戦略、生産体制の再構築など、未来への挑戦は止まらない。 本リレー連載「頑張っちゃえ NISSAN」では、厳しい現実と並走しながらも改革を進める日産の姿を考える。

※ ※ ※

 今日、電気自動車(EV)シフトの遅れや技術力不足で批判される日産。しかし実際は「早すぎた挑戦」の連続だった。リーフや自前のバッテリー工場、e-POWERはいずれも、世界や市場が追いついていない技術だった。今こそ、安易に市場に迎合するのではなく、独立独歩の道を歩む「尖った日産」の真価を見直すべきだ。

 近年の日産の世界初といえば、やはり量産型EV「リーフ」だろう。2010(平成25)年、地球温暖化への関心が高まるなか、新時代の自動車として登場した。世界中で評価され、

「欧州カー・オブ・ザ・イヤー2011」
「ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー2011」

など数々の賞を受賞した。しかし価格はCセグメント車より高く約370万円。フル充電で280kmという航続距離の短さと、充電インフラの不足が販売の足かせとなった。日産は当時、最高峰の技術で量産型EVを生み出したにもかかわらず、市場の理解と価格感覚、インフラ整備が追いついていなかったのである。

 2022年に登場した軽EV「サクラ」も完成度は高い。しかしやはり、市場の理解は追いついておらず、早すぎた感は否めない。過去にはNECと共同出資で2007年にリチウムイオンバッテリー量産メーカーAESCを設立した。設立当時は世界最先端だったが、2018年にエンビジョングループにバッテリー事業を譲渡した。EV戦国時代の幕開け前に、この決断を下している。

総じて言えば、日産に技術がなかったわけではない。「世界が日産に追いついていなかった」のだ。日産は前衛芸術のように、時代を先取りしすぎた存在である。

全てのコメントを見る