世界が追いつけなかった「日産」の真実? リーフとAESCに見る「早すぎた挑戦」の代償とは【リレー連載】頑張っちゃえ NISSAN(6)

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日産はEV先駆者として2010年リーフを投入したが、航続280kmや370万円の高価格が市場の理解を超え、後発組に追い抜かれた。e-POWERやe-4ORCEなど独自技術で快適性を極め、尖り続ける姿勢こそ、日産の真価である。

異端HVの真価

技術の仕組み(画像:日産自動車)
技術の仕組み(画像:日産自動車)

 日産の独立独歩の技術といえば、e-POWERがある。e-POWERはエンジンで発電し、モーターで駆動するEVライクな走りを楽しめる独自方式のHVで、構造的に他のHVとは異なる異端の存在だ。高速域の燃費では他のHVより不利だが、街乗りでは静粛性とレスポンスで優位に立つ。

 2025年から投入される第3世代e-POWERは、主要な五つの構成部品を一体化した「5-in-1」と、最新の専用エンジンを搭載し、高速燃費や室内静粛性が向上する。技術を進化させつつ、e-POWERで高速走行から街乗りまで「全部で勝つ」のではなく、

「得意領域を極める」

方向にシフトするのが合理的だろう。

 その方向性のひとつが4WD制御技術「e-4ORCE」である。e-4ORCEはハンドリング性能、乗り心地、雪道での安定感を大幅に向上させるモーター制御技術だ。本来はEV向けの技術だが、発電型のe-POWERにも応用できる。つまり、e-POWERは電動化への橋渡し技術として、完成度を高める役割も担えるのである。

 他のHV方式は技術的にHVとして完結しており、その先がない。e-POWERとe-4ORCEの組み合わせにより、燃費競争から脱却し、乗り心地で勝負する方向に転換した。技術の尖りを恐れず、個性で勝負する日産らしさを体現したと言える。そこには「燃費で勝てないなら快適性で勝つ」という潔さ、つまり

「開き直りの美学」

がある。

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