中小運送業者は大激怒? 軽油カルテル疑惑直撃、1円高で業界「150億円負担」の辛らつ現実

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公取委が大型車向け軽油価格のカルテル疑惑で8社を立ち入り調査。法人向け平均価格は5年で88.5円から128.5円に上昇、業界全体に年間150億円超のコスト増が転嫁されており、物流構造の脆弱性が浮き彫りとなった。

軽油価格カルテルの衝撃

物流トラック(画像:写真AC)
物流トラック(画像:写真AC)

 2025年9月10日、公正取引委員会が石油販売会社8社に一斉立ち入りを実施した。容疑は軽油価格のカルテルだ。対象は

・東日本宇佐美(東京都)
・太陽鉱油(同)
・共栄石油(同)
・ENEOSウイング(名古屋市)
・エネクスフリート(大阪市)
・新出光(福岡市)
・キタセキ(宮城県)
・吉田石油店(香川県)

と、大型車向け給油所を展開する企業群である。報道によれば、営業責任者らが定期的に会合を開き、販売価格を維持・引き上げる取り決めを行っていたとされる。

 ここでいうカルテルとは、

「競合企業が互いに価格や販売条件を事前に協定して市場競争を制限する行為」

を指す。法律上は独占禁止法違反となり、消費者や取引先に不当な負担を強いることになる。今回の立ち入りは、まさにこうした疑いに基づくものである。

 軽油は国内物流の基盤だ。石油情報センターの調べによれば、法人向け軽油の全国平均価格は2020年7月の88.5円から2025年7月には128.5円へと上昇し、わずか5年で1.4倍以上となった。全日本トラック協会によれば、軽油価格が1円上がるだけで業界全体に

「約150億円」

のコスト増となる(『NHK』2025年9月10日付け)。これらのコストは運賃改定や燃料サーチャージを通じて荷主に転嫁され、最終的には消費者物価に直結する。

 この価格転嫁の連鎖に耐えられないのは中小運送業者だ。取引関係上、運賃の引き上げを主張できず、

・自己資本の圧迫
・人件費削減

に追い込まれる例も多い。燃費管理や運転方法の工夫といった内部努力だけでは、価格上昇の影響を吸収することは難しいのだ。

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