日曜夜9時、東京駅ホームはなぜ「恋人たちの舞台」になったのか――80~90年代「シンデレラ・エクスプレス」が描いた週末ドラマとは
民営化直後のJR東海は知名度不足に直面した。週末の最終列車ホームを舞台に、年間65回放送のCMと駅ポスターで地域認知を急速に浸透させた戦略は、遠距離恋愛という共感演出とメディア連動を両立させ、都市と地方のブランド格差解消にも寄与した。
遠距離恋愛の原風景

恋人と遠く離れて暮らす人は現在も少なくない。トークアプリや電話で寂しさを紛らわせる人も多い。しかし、携帯電話やインターネットのなかった時代の遠距離恋愛は、今よりさらに困難だった。
当時の通信手段は手紙か電話に限られ、会うことさえ容易ではなかった。毎日の電話で
「おはよう」
「おやすみ」
を交わすのが精いっぱいだった。それでも関係を深めるカップルもいれば、卒業や転勤を機に別れを選ぶカップルもあった。
フォークバンド・かぐや姫の『なごり雪』(1975年)に描かれる情景は、季節の風物詩として多くの人々の記憶に残っている。