日曜夜9時、東京駅ホームはなぜ「恋人たちの舞台」になったのか――80~90年代「シンデレラ・エクスプレス」が描いた週末ドラマとは
民営化直後のJR東海は知名度不足に直面した。週末の最終列車ホームを舞台に、年間65回放送のCMと駅ポスターで地域認知を急速に浸透させた戦略は、遠距離恋愛という共感演出とメディア連動を両立させ、都市と地方のブランド格差解消にも寄与した。
遠距離恋愛の最終列車
1980年代、日曜日の21時になると、東京駅の14番線ホームはカップルで埋め尽くされた。
新大阪行き最終「ひかり289号」には、週末を共に過ごすために集まった遠距離恋愛のカップルが乗り込み、再びの別れを惜しんで抱き合った。
恋人たちの無数のドラマが交錯する最終列車。この光景は「シンデレラ・エクスプレス」と呼ばれるようになった。
名前の由来は松任谷由実の同名曲である。
「シンデレラ 今 魔法が」
「消えるように列車出てくけど」
「ガラスの靴 片方 彼が持っているの」
と歌われたこの曲は、1985(昭和60)年にTBS系『日立テレビシティ』で放送されたドキュメンタリー『シンデレラ・エクスプレス 48時間の恋人たち』で使用されていた。
番組オリジナルとして制作されたユーミンの楽曲は、国鉄民営化(1987年4月)前の暗い空気を払拭するかのようにヒットした。
その後、わたせせいぞうの漫画『ハートカクテル』とのコラボアニメ化や、1986年9月に放送された『東芝日曜劇場』でのドラマ化も行われた。