死者346人の悲劇が変えた航空戦略――なぜ「ターキッシュ エアラインズ」は就航国数世界最多になれたのか?
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DC-10事故の教訓と影響

しかし1974年3月3日、ターキッシュ エアラインズは航空史に残る悲劇に見舞われた。イスタンブールからパリ経由でロンドンに向かっていた981便は、新鋭機のダグラスDC-10を使用し、ほぼ満席の乗客を乗せてパリ・オルリー空港を離陸した。
離陸から10分後、後部貨物室のドアが外れて吹き飛び、近くにいた六人の乗客が飛行機の外に吸い出された。貨物室の急減圧と客室の圧力差で客室の床が抜け、操縦に必要な油圧や配管が全て切断された。
制御不能となった機体は、ドアが外れてからわずか71秒で墜落した。この事故では欧州への研修旅行に向かっていた新卒内定者の日本人46人を含む
「346人」
が犠牲となった。981便の事故は当時、史上最大の航空機事故であり、現在でも死者数が4番目に多い事故となっている。
このダグラスDC-10は深刻な初期不良を抱えていた機材であった。1972年、アメリカン航空で貨物ドアが飛行中に脱落する事故が発生している。幸い緊急着陸に成功し死者は出なかったが、原因は貨物ドアのラッチ機構の設計にあった。
連邦航空局(FAA)はこの事故を受けて、ドアロックの点検窓設置やロック無理閉め防止用の補強板追加、客室と貨物室間の圧力差による床抜け防止のためのベントホール増設と補強、制御用ケーブルや配管の分散配置検討を勧告した。
しかしこれらの警告は拘束力が弱く、費用のかかる通気孔対策などは実施されなかった。事故機も点検窓の取り付け以外は改修されず、欠陥を残したまま放置された。ターキッシュ エアラインズは問題のある機体を受領してしまったといえる。
余談だが、事故機のDC-10はANAに引き渡される予定であった。しかしロッキード事件の影響でANAはL-1011トライスターを導入し、DC-10の導入をキャンセルした。ダグラス社は困り果てた機体を格安でトルコ航空に販売したのである。
981便の事故の影響もあり、ターキッシュ エアラインズは初期不良によるトラブル防止のため、新型機の導入を控える方針をとっている。この方針は現在も続いており、ANAや多くの大手・LCCが導入を決めた新型中型機A321XLRに対しても、ターキッシュは導入検討の調査段階にとどまっている。