バスの「長さ」はどうやって決まるのか?──輸送力と規制のバランスを考える

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バスの長尺化は輸送力を1.5倍以上に高める一方、規制や都市インフラ整備の課題も浮上している。年収700万円以上の限られた熟練ドライバーの有効活用が急務となるなか、技術革新と政策緩和の両面で効率的導入の道筋を模索する必要がある。2024年のドライバー不足問題を背景に、安定した運行環境の構築がバス事業の経済合理性を左右する。

都市交通における車両寸法の効率論

バス(画像:写真AC)
バス(画像:写真AC)

 バス車両の寸法について意識したことがあるだろうか。筆者(西山敏樹、都市工学者)は学生時代、大学への通学に路線バスを日常的に利用していた。車両は三菱ふそうの「エアロスター」が中心だった。

 同じ大型バスでも、車長には幅がある。調べたところ、

・10.14m
・10.64m
・11.14m
・11.34m

と少なくとも4パターンが存在していた。最短と最長では1.2mの差がある。この違いは、定員ベースで10~12人の輸送能力差につながる。

 特に通学需要の多い路線では、より長いバスを用いた方が輸送効率は高まる。台数を減らすことで、ドライバーや燃料などの運用コストも削減できる。

 平成初期の仕様では、大型バスの最短モデルで定員は70人後半から80人台。最長モデルでは90人程度の乗車が可能だった。1000人を輸送する場合、使用台数に2台程度の差が生じる計算になる。ひとりの運転手が運べる人数に差が生じる以上、バスの寸法は運行効率のカギとなる。

・車両調達コスト
・ドライバー不足

の観点からも、経済合理性を追求するなら見過ごせない要素である。一方で、バスが長くなると取り回しに課題が生じる。バス停やバスターミナルといった都市インフラの対応が必要になり、運転の難易度や交通安全面での懸念も増す。

 輸送効率と都市設計、安全性とのバランスをどう取るか。バス寸法の選定は、単なる車両の仕様にとどまらず、都市交通全体の最適化にも直結する論点である。

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