わずか14万人の地方自治体が「日本最大の海事都市」になった根本理由――愛媛県今治市を考える

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愛媛県今治市は人口約14万7000人の地方都市でありながら、日本の造船・海運産業の約30%を担う国内最大級の海事クラスターを形成している。造船所14社、関連企業160社が集積し、外航船1100隻の保有数は国内全体の約3割に達する。2005年の市町村合併による行政一体化と、産業・制度・教育・文化が一体化した高密度なエコシステムが、国際競争力の源泉となっている。今治は単なる工業都市を超え、地方創生の新モデルとして注目を集めている。

海と産業が生む地方拠点力

今治市(画像:写真AC)
今治市(画像:写真AC)

 愛媛県北東部に位置する今治市。同市の人口はわずか14万6721人(2025年3月時点)にすぎない。しかし、この地方都市が日本最大級の造船・海運拠点として機能している事実は、数値を見れば圧倒的だ。

 2021年度時点で、今治の船主が保有する外航船は約1100隻にのぼる。これは国内全体の約3割を占める規模であり、建造量ベースでも、国内造船の約35%が今治市内の企業によって担われている。

 なぜ、これほどの集積が地方都市に生まれたのか。地理的優位や歴史的経緯だけでは、この構造的な強さは説明できない。今治が

「世界に誇る海事都市」

として位置づけられるに至った背景には、

・産業集積
・制度設計
・人材育成
・地域経済戦略

が有機的に結びついた、極めて高密度なエコシステムの存在がある。

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