多摩ニュータウンに「都内最古の陸橋」がある理由――戦後開発の街に、いったいなぜ?
東京都西部の多摩ニュータウンは、約2884haに及ぶ日本最大級の大規模ニュータウンだ。起伏の激しい地形に対応し、200を超える橋梁を整備。1960年代から始まった開発は、住宅供給から質の向上へと方針転換し、教育や商業機能も充実させた。一方、老朽化や少子高齢化が課題となるなか、長池見附橋の移設保存は、歴史と現代を融合する持続可能な都市づくりの象徴となっている。
高低差克服の橋梁網200超

東京都西部の丘陵地に広がる多摩ニュータウンは、日本有数の大規模ニュータウンであり、特徴のひとつに「橋の多さ」がある。
起伏の激しい地形に開発されたため、高低差を克服する都市設計が求められた。その結果、住民の移動負担を軽減する手段として、多数の橋梁が街全体に整備された。
さらに、都市計画の段階で歩車分離を徹底したことも、橋が多くなった理由のひとつだ。交差点には信号や横断歩道ではなく歩道橋を設置し、歩行者の安全確保を優先した。
こうした設計思想の積み重ねにより、多摩ニュータウンには河川にかかる橋も含め、200以上の橋が存在する。
「橋の街」
と呼ばれる理由がここにある。多摩ニュータウンは、戦後の高度経済成長期に計画された理想都市のひとつであり、そのインフラ設計には当時の先進的な都市工学と安全思想が色濃く反映されている。