バスの「長さ」はどうやって決まるのか?──輸送力と規制のバランスを考える

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バスの長尺化は輸送力を1.5倍以上に高める一方、規制や都市インフラ整備の課題も浮上している。年収700万円以上の限られた熟練ドライバーの有効活用が急務となるなか、技術革新と政策緩和の両面で効率的導入の道筋を模索する必要がある。2024年のドライバー不足問題を背景に、安定した運行環境の構築がバス事業の経済合理性を左右する。

連節バスと規制の攻防戦

バス(画像:写真AC)
バス(画像:写真AC)

 日本には保安基準に収まらないバスが、時代の要請に応じて登場してきた。代表例のひとつが戦後直後に活躍した「トレーラーバス」だ。

 1947(昭和22)年から1950年ごろ、戦時中の路線バス車両の不足を補う目的で、トレーラー式の大型バスが投入された。ボンネット型またはキャブオーバー型のトラクターが客車を牽引する構造で、当時の標準バスを上回る輸送力を実現していた。

 日野のトレーラーバスT11B+T25型は、全長13.88mで定員は96人に達した。現在の長尺路線バスより多くの乗客を一度に運べた。保安基準がまだ整備されていなかった時代背景もあり、進駐軍の大型車両を引き合いに、日野が公道走行許可を獲得したという逸話も残る。

 その後、日本のバスはリヤエンジン方式が主流となり、ボンネットを廃したスタイルが一般化。バスの長尺化も進んだ。近年は再び

「ひとりのドライバーで多くの乗客を運ぶ」

ことへのニーズが高まっている。背景には、労働力不足や2024年問題がある。こうしたニーズに対応するのが、車体を関節で連結した「連節バス」だ。

 主流となっているのは、先頭車両が2軸、後部車両が1軸の計3軸構造で、全長は18~19m。乗車定員は130人前後に達し、輸送効率の高い車両として注目されている。

 一般制限値を超える車両は、路線バスに限らない。過去には、JRバス関東が導入した「メガライナー」が高速バス界で話題を呼んだ。

 2002年12月、つくばエクスプレス開業前の輸送手段として、ドイツ・ネオプラン製のメガライナーを特殊車両扱いで投入。全長14.99m、全高3.79m、定員は最大86人という仕様で、都心とつくば間の大量輸送を支えた。10分間隔の運行もあったというから、その重要性がうかがえる。

 このように、全長12mという一般制限値を超えた長尺車両は、都市の大量輸送需要に応じて繰り返し登場してきた。ただし、現在ではこれらの車両を運行するには「特殊車両通行許可」が必要になる。道路管理者に対し、運行ルートや時間帯を申請しなければならない。

 通行可能な道路が制限されるなど、導入のハードルは高い。しかし、大量輸送という社会的ニーズに応えるには、制度の活用とインフラ整備の両立が求められる。

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