率直に言う 結局トヨタの「全方位戦略」が正しかった――欧州EV戦略の迷走から考える
欧州自動車大手が軒並みEV戦略を見直す。2024年の世界EV販売1750万台のうち中国が1287万台を占め、中国以外ではわずか7%。需要伸び悩みに対応し、オペルやメルセデスはエンジン車も継続、生産の柔軟化を迫られている。
オペルEV戦略転換

ドイツの自動車メーカー、オペルは2025年8月下旬に電気自動車(EV)戦略の見直しを発表した。オペルは1862年に設立された老舗の自動車メーカーである。歴史はあるものの、2006年に日本市場から撤退しており、日本ではなじみが薄い。現在はステランティス傘下にある。
今回の見直しでは、2028年以降はEVのみとしていた方針を転換し、エンジン車の製造を継続することを明らかにした。今後はマルチ・エネルギー戦略、いわゆるトヨタの全方位戦略に移行する。EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HV)、エンジン車を併存させて生産を続ける方針である。背景には、世界的なEV需要の伸び悩みがあると説明している。
同時期、ドイツの自動車メーカー、ポルシェもEV用バッテリーのスタートアップを中止した。ポルシェは2021年にセルフォース社を設立し、自前でバッテリーを開発する計画を掲げた。しかし、わずか4年で計画は終了した。
セルフォース社の設立には、ドイツ連邦と州あわせて5670万ユーロの補助金が投入されていた。この補助金も結果的に無駄となる。ポルシェが中止を決断した背景には、米国と中国でのEV需要低迷と、中国製バッテリーとの価格競争があるとされる。