バスの「長さ」はどうやって決まるのか?──輸送力と規制のバランスを考える
バスの長尺化は輸送力を1.5倍以上に高める一方、規制や都市インフラ整備の課題も浮上している。年収700万円以上の限られた熟練ドライバーの有効活用が急務となるなか、技術革新と政策緩和の両面で効率的導入の道筋を模索する必要がある。2024年のドライバー不足問題を背景に、安定した運行環境の構築がバス事業の経済合理性を左右する。
基準値と緩和措置のせめぎ合い

日本の自動車寸法は、車両制限令および道路運送車両法の保安基準により定められている。いわゆる「一般制限値」は、
・全長:12.0m
・全幅:2.5m
・全高:3.8m
が上限となっており、バスの設計・商品企画もこれを前提として進められる。
例えば、いすゞ自動車の大型路線バス「エルガ(ERGA)」では、全長は10.43~11.43m。全幅は2.485m、全高は3.045mに収まっている。一方、ハイデッカー仕様の高速バスや貸切バスになると、全長11.9m、全幅2.49m、全高3.5mとやや大型化する。
中型路線バスの相場は全長8~9m、全幅2.3m。小型になると全長7m、全幅2.1mとなり、いずれも一般制限値の枠内にある。2階建て長距離バスとして知られる三菱ふそう「エアロキング」も、高さ3.76mに抑えられている。
重量面でも規定がある。軸重は10t、輪重は5t、接地圧は200kg/平方センチmまでとされる。隣接軸重には複数の条件があるが、上限は最大で20t。旋回半径は12.0m以下が条件となる。これらの数値を超えないことが、公道を自由に走るための前提である。
加えて、高速道路を走行するバスには全席シートベルト、自動ブレーキ(ABS)、非常口(定員30人以上)など、安全装備の搭載が義務付けられている。
ただし、近年の連節バスのように、これらの基準を超える車両も存在する。その場合には「保安基準の緩和申請」を通じ、個別に許可を得る必要がある。基準外であっても、社会的ニーズと安全性が認められれば、公道走行が認められるケースもある。