東武東上線の謎！ “北西”を走るのに、なぜ「東上」なのか？
東京・池袋と埼玉・寄居を結ぶ東武東上線。そのルートの裏には、渋川経由で新潟・長岡を目指した壮大な私鉄計画があった。山岳地帯に挑んだ幻の延伸構想と未成線の背景から、鉄道事業における資金、地形、需要予測という「三重の壁」が浮かび上がる。
名称と北西進路の矛盾
東武東上線は、池袋駅から埼玉県寄居町の寄居駅までを結ぶ東武鉄道の路線である。ラインカラーは紺色、路線記号は「TJ」である。首都圏北西部の通勤・通学路線として機能し、和光市駅からは東京メトロ有楽町線や副都心線と直通運転を行う。
沿線には東京都板橋区の大山駅に巨大商店街があり、小江戸として知られる川越など地域色が濃いエリアが広がる。
独特の魅力を持つ一方、やや異質な面もある。最大の特徴は、同じ東武鉄道の伊勢崎線や野田線と接続していない点だ。埼玉県内を走っているにもかかわらず、本線系統から孤立し、まるで「離れ小島」のような存在である。
かつては東武線の時刻表に東上線が掲載されていなかった時期もある（2016年以降に掲載されている）。沿線情報のフリーペーパーも地域が異なるため、東上線独自のものが発行されている。路線カラーが異なること自体は問題ないが、駅の看板では「東武東上線」のうち「東上線」の文字が「東武」より大きなフォントで表示される場合もある。
東上線の最大の謎はその名称だ。「東上」と名付けられているにもかかわらず、池袋駅から見た進路は「北西」である。利用者のなかには
「西上線ではないか」
と感じる者も少なくない。この名称のズレには歴史的な理由がある。