日本の道路が「アメ車仕様」になってしまう!? 国産車99%の壁、規制緩和で崩壊危機? 安全・主権を揺るがすトランプ政権の通商圧力とは

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トランプ政権下で再燃した日米自動車通商交渉。米国が日本の安全基準を非関税障壁と指摘し、シェア1%未満の米車の参入障壁を緩和求めるなか、日本の規制緩和が経済戦略と消費者保護の間で揺れる。

WP29と統合基準の可能性

WP.29本会議の様子(画像:国土交通省)
WP.29本会議の様子(画像:国土交通省)

 現在注目すべきは、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)である。このフォーラムでは、各国の自動車安全基準を国際的に調和させるための協議が行われ、すでに多くの基準が統一されている。

 国際的な枠組みで合意を形成する方が、日米間で基準を調整するよりも政治的、技術的に安定し、長期的な利益をもたらす。WP.29のような国際組織では、各国の自動車安全基準を調和させるプロセスが進んでおり、全体的な効率を高める仕組みとなるため、最終的に各国にとって利益をもたらす。この枠組みの中で、日本は主要メンバーとして積極的に関与し、国際的なルール作りをリードしている。

 このような国際的な調整は、各国が自国の利益を守りつつ、全体の競争力を高める方向に導かれる。自動車業界の国際的競争が激化する中、共通基準に基づく製造プロセスや部品調達が効率的なコスト削減を促進し、各国の自動車メーカーにとっても利益をもたらす。さらに、技術革新が国際基準に合わせて進むことで、業界全体の技術水準が均一化し、消費者にもより高い安全性が提供される。

 しかし、すべてを国際基準に委ねることは現実的ではない場合もある。日本には独自に積み重ねた知見や技術があり、特定の安全分野ではこれを守る必要がある。例えば、歩行者や子どもの保護に関する基準は、日本の社会的背景や文化に根ざしており、単に国際基準に合わせることが最適ではない。このような分野では、独自基準を保ちながらも、協調可能な部分で歩み寄り、国際的な合意形成を目指すことが求められる。

 日本にとって重要なのは、国際基準に単純に迎合するのではなく、独自の強みを維持しつつ、全体として最も効率的な解決策を追求することだ。国際的なルール作りの場で、自国の安全基準が過度に妥協されないよう注意を払い、協調できる部分では柔軟に対応することが、最終的には市場全体の効率性を高め、長期的な利益を生む。

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