「熱海乗り換えは不便」 JR直通列車、なぜ減便? 熱海超え~沼津5.5往復に…地域分断で経済圏衰退も! 利用者に寄り添うダイヤ設計とは?

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近年、JRの境界駅をまたぐ直通列車が減少している。熱海、米原、黒磯などでは、ダイヤ改正のたびに乗り換えの手間が増し、利用者の負担が深刻化。鉄道会社のコスト削減や車両運用の合理化が背景にあるが、地域間の分断が進み、観光・経済活動への悪影響も懸念される。関係人口減少が続けば、地方経済のさらなる衰退を招きかねない。境界駅の機能強化や短距離ピストン運行など、解決策を探る。

地域分断が生む人口減と労働力不足

沼津駅(画像:写真AC)
沼津駅(画像:写真AC)

 沼津から横浜へのアクセスを考えるとき、

「会社自体が熱海で分断され、ホームを超えた乗り換えが必ず発生する」
「国府津で同じホームで乗り換え、横浜へアクセスしやすい」

という状態のどちらが市民にとって好ましいかは一目瞭然である。筆者(高山麻里、鉄道政策リサーチャー)も車両使用料や線路使用料の概念は理解しているが、地域の分断を避け、関係人口を維持するためには鉄道での分断は適切ではない。地域経済圏を鉄道で分断しないためにも

「越境運転を短い編成で小さいエリアで行うのが最適解」

と考える。越境鉄道の便数を減らすことで、境界駅周辺にはどこへでもアクセスできるメリットが生まれ、経済的な効果も期待できる。その結果、住民が増加する可能性もある。

 一方で、境界駅の両側にある駅周辺は「境界駅を超えて先へ進むのが難しくなる」となり、リクルート情報を出しても人が集まりにくいという状況が生じる。鉄道アクセスが不便であれば、観光業や地元商店街にも悪影響を及ぼすだろう。今後、人口減少が進むなかで、各都市はお互いの関係人口を増やすことが重要になる。こうした背景から、越境列車の存在意義はさらに高まると筆者は考えている。

 減便の先にある課題として、越境列車の減便は地域間の交流を狭め、労働力や観光客の減少を招く恐れがある。これは、重要な関係人口の減少にもつながる。エリア間の繋がりを保ち、地域の流動性を維持するためには、境界駅を超える列車の意義は不可欠である。

 運行ダイヤの設計においては、事業者の視点だけでなく地域住民の声を反映させることが重要だ。持続可能で都市経済の発展を考える上でも、境界駅を越える列車の役割を再評価し、そのダイヤを慎重に決定してほしい。

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