「熱海乗り換えは不便」 JR直通列車、なぜ減便? 熱海超え~沼津5.5往復に…地域分断で経済圏衰退も! 利用者に寄り添うダイヤ設計とは?
地域生活圏と事業者の視点のギャップ

地域住民にとって鉄道は通勤・通学の重要な交通手段だ。JR分割民営化から38年が経過するが、境界駅を越えても生活圏が変わることはない。
例えば、熱海や米原を境にした場合、地域住民は乗り換えが必要となり、朝は短くて5分程度、昼以降は10分程度の乗り換え時間が発生することが多い。もちろん、接続列車の待ち時間によっては20分程度の待機時間が生じる場合もある。
乗り換えがスムーズでない場合、トラブルにより接続できないこともあり、ロスタイムが長引くことになる。このような待ち時間は通勤者にとってストレスの原因となり、地域間交流の断絶を招く恐れもある。交通が分断されれば、関係人口も減少する可能性があり、これは望ましくない。
鉄道事業者にとっての使命は、安全・安心で正確な運行だ。かつて、熱海を越えるJR東日本の列車は東京を起終点としていたが、上野東京ライン化により、首都圏北部の宇都宮や高崎などとも直通するようになった。
しかし、JR東日本管内でトラブルが発生すれば、熱海から沼津の運行にも影響を及ぼすことになる。米原を越えて大垣まで運行されるJR西日本の列車も同様で、京都や大阪方面でのトラブルが米原~大垣間の運行に支障をきたす。
大都市圏から郊外都市への直通列車は長距離通勤者にとって便利だが、事業者の視点から見ると、乗り入れてきた列車がトラブルで欠便するリスクがある。場合によっては翌日の折り返し便も欠便となることがある。
経済的にはエネルギーコストの抑制が課題だが、欠便や後続列車の混雑激化は運転士や車掌のストレスを増大させる懸念がある。欠便が発生すれば、通常会社間で相殺する車両使用料にも影響が出ることがある。
このため、会社間の越境運転は減少していく運命にある。トラブルを回避するためには、短い区間を短い編成で運行し、相互乗り入れをなくしてピストン運行することが最適だ。それがコスト削減の解決策となり、都市間輸送の長い編成を乗り入れさせてもデメリットが大きいため、越境運転はますます減少するだろう。