「熱海乗り換えは不便」 JR直通列車、なぜ減便? 熱海超え~沼津5.5往復に…地域分断で経済圏衰退も! 利用者に寄り添うダイヤ設計とは?

キーワード :
, ,
近年、JRの境界駅をまたぐ直通列車が減少している。熱海、米原、黒磯などでは、ダイヤ改正のたびに乗り換えの手間が増し、利用者の負担が深刻化。鉄道会社のコスト削減や車両運用の合理化が背景にあるが、地域間の分断が進み、観光・経済活動への悪影響も懸念される。関係人口減少が続けば、地方経済のさらなる衰退を招きかねない。境界駅の機能強化や短距離ピストン運行など、解決策を探る。

地域越境列車の運行ダイヤと経済合理性

古河駅(画像:写真AC)
古河駅(画像:写真AC)

 宇都宮線を例にとると、これまでこの路線はグリーン車を装備した長編成が栃木県の黒磯まで運行されていた。しかし、利用者数の変化を見てみると、大宮~古河間では1987(昭和62)年度から2022年度にかけて13万121人から13万8338人へと増加し、古河~宇都宮間も4万1078人から4万4516人と増加した一方で、宇都宮~黒磯間では1万9594人から1万5835人へと減少している。

 これは、人口減少やコロナ禍の影響でテレワークが普及し、長距離通勤の需要が減少したためである。このため、2022年には宇都宮以北からの10両編成の直通列車が廃止され、宇都宮~黒磯間はワンマン運転のローカル列車によるピストン輸送にシフトした。ワンマン運行にすることで車掌の人数を減らし、エネルギー費用や車両の管理費用も抑制できる。

 これにより、都市部から離れたエリアでは、生活圏を超えた直通客への無理強いを避けつつ、短い編成での運行が現実的な選択肢となる。さらに、日光線と共通の車両を使い、エリアごとに車両を分けて効率的な運行を進めることで、人件費の削減や越境運転の見直しが可能となる。

 次に、越境運転を小さなエリアで短い編成で行うことが最適解だと考える。地域の結びつきや公共交通との関係性を考えると、都市間を分断するような運行は避けるべきで、相互交流がなくなるとクローズドな経済圏が形成される恐れがある。

 最近では、国府津~熱海~沼津間で短い5両編成の列車を使い、JR東日本からJR東海に跨って運行する例も見られる。短い距離であれば遅れのトラブルも回避しやすく、エネルギー面や車両の効率的な運用にもメリットがある。

 例えば、宇都宮線であれば、小金井~宇都宮~黒磯間、高崎線であれば籠原~高崎~前橋間といったローカル運行が今後の選択肢となるだろう。一方、長距離の都市間輸送には、長大編成がトラブルに巻き込まれやすいというデメリットがあるため、利用が旺盛な区間に集中させる方が効率的であると考えられる。

全てのコメントを見る