バス運転手の年収はなぜ上がらないのか? 激務薄給の背後にある「規制緩和」という罠

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なぜバス運転手の賃金は上がらないのか。労働時間や努力を追加で投入しても、乗客がいなければ売上は増えない――そんな現実をどう変えられるか。

運転手の労務環境改善を

玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(画像:慶應義塾大学出版会)
玄田有史編『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(画像:慶應義塾大学出版会)

 しかし、この賃金下落は将来に深刻な影を落としている。

 営業用バスの運転手には、大型自動車第二種免許の取得が義務付けられている。この免許を取得するには、大型自動車免許を取得していることが必要であり、大型自動車免許の取得には普通自動車免許を取得してから免許停止期間を除き3年以上経過していることが必要になるなど、一定の時間と費用がかかる(指定教習所に通えば、普通免許からの取得も可能である)。

 そのため、たとえバス運転手の賃金水準を引き上げたからといって、すぐさま必要な人数が集まるとは限らない。

 実際、大型自動車第二種免許の保有者、新規取得者数ともに減少傾向である。バス会社は不足する運転手を中途で採用しようとしているが、そもそも免許の保有者自体が減ってしまえばそれも難しくなる。

 今後も地域の公共交通機関として路線バスの果たす役割は大きいと考えられるが、このままでは肝心の運転手がいないために運行ができない、制限されるということにもなりかねない。

 規制緩和によって私たちは運賃の低下という恩恵を受けたわけだが、今後のバス路線の維持ということを考えると、運転手の労務環境を改善できるような経営体系、運賃体系についても考えていく必要があるだろう。

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