民営化の公約「ブルートレイン = なくならない」は結局、守られたのか?【短期連載】国鉄解体 自民党「1986年意見広告」を問う(5)

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ブルートレイン消滅の背景には、新幹線の高速化や競合する高速バス・航空の台頭、安価なビジネスホテルの増加が影響。夜行列車の利用者は減少傾向にあり、運行コストの高さも課題。環境意識の高まりや鉄道旅行の再評価があれば、復活の可能性も期待できる。

環境意識が導く復活劇

上野駅で出発を待つ「カシオペア」札幌行き。2011年6月24日、筆者撮影(画像:大塚良治)
上野駅で出発を待つ「カシオペア」札幌行き。2011年6月24日、筆者撮影(画像:大塚良治)

 このように、複数の要因が重なり、夜行列車は衰退したと考えられる。復活を検討する際には、人手不足や働き方改革に対応する必要がある。寝台列車は、1列車あたりの輸送量が新幹線と比べて少ないため、採算性が低くなる(定員は、サンライズ出雲・瀬戸が300人程度であるのに対して、新幹線N700系は約1300人で約4倍)。その上、夜間労働がともなうため、要員確保が課題となっている。

 働き方改革により、2023年3月以降、従業員に月60時間を超える時間外労働を深夜の時間帯に行わせる場合、時間外割増賃金率50%を加えた75%の割増賃金が支払われることが義務化された。JRに限らず、人手不足が深刻化するなか、企業価値を高めるために、貴重な人材を収益性の高い事業に配置転換する判断が増えるのは自然な流れである。

 本稿では、「ブルートレインなど長距離列車もなくなりません。」という意見については守られていないと判定するが、消費者ニーズや環境の大きな変化が夜行列車の存続に逆風となったことを指摘したい。つまり、JRを批判するだけでは解決策は見いだせない。

 夜行列車には、表面的な採算性だけでは測れない価値がある。鉄道旅行の魅力を高め、鉄道ファンの裾野を広げる効果や地域活性化による経済効果が期待できる。欧州では、

「飛び恥(Flight Shame)」(環境負荷の大きい航空旅行に対する罪悪感を表す言葉。飛行機の利用が大量の二酸化炭素を排出するため、環境に悪影響を与えることを恥じるという意味)

への対応として、一部の夜行列車が復活した。夜行列車については、採算性だけでなく、社会全体に及ぼすポジティブな影響を考慮し、ステークホルダーと協力して運行が成立する条件を工夫する努力が求められる。

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