物流トラック「積載率の低下」は本当か?【短期連載】フィジカルインターネットの課題を考える(2)

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フィジカルインターネット実現の必要性として挙げられる積載効率の低下だが、これは本当なのだろうか?「フィジカルインターネットの課題を考える」連載第2話では、本問題を検証しよう。

輸送効率を考えるために必要な「前提条件」

物流現場のイメージ(画像:写真AC)
物流現場のイメージ(画像:写真AC)

 慢性的なトラックドライバー不足などを背景とした、物流コストの上昇。抜本的な人員増加が望めない中で、物流サービス維持継続のために模索されているのが、フィジカルインターネットだ。

 フィジカルインターネットは、インターネットの仕組み、とりわけ、シェアリング(共有)とコネクト(連携)をまねることで、荷主間にある壁、物流事業者間にある壁、運べる/運べない貨物の壁などを取り除き、限りなくオープンな物流ネットワークを創り上げることで、究極に最適化された物流を目指す「共同輸送サービス」の概念である。

 フィジカルインターネットが必要とされる原因として名指しされたのが、ECの拡大による宅配便の急増と、トラックの「積載効率」低下である。

 積載効率(%)とは、輸送トンキロを能力トンキロで割ったものである。また、輸送トンキロとは、積載した貨物の重量に、輸送した距離を乗じたものである。例えば、1トンの貨物を10km輸送した場合には、10トンキロとなる。一方、能力トンキロは、トラックの最大積載量に輸送距離を乗じたものとなる。

 したがって、最大積載量10トンのトラックに、5トンの貨物を積んで10km輸送した場合には、積載効率は50%になる。

 まず、輸送効率とは「重量」を基準に算出されることを覚えておいてほしい。

 統計によれば、2010(平成22)年における営業用トラックの台数は94万台だったが、徐々に増加し、2019年には124万台になった。

 一方、営業用トラックによる輸送トン数は、2010年28億5960万トンから2019年28億4203万トンとわずかに減っている。

 つまり営業用トラックに限って言えば、トラックの台数が132%へ増加する一方、貨物輸送量は、1%ほど減っているに過ぎない。

 トラックの台数が増えているのに、貨物量(厳密には貨物重量)が減っているわけだから、積載効率は下がって当然だ。

 ちなみに、輸送・機械運転従事者数(ほぼトラックドライバー総数に等しい)は、2010年79万人から、2019年87万人へ増えている。

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