物流トラック「積載率の低下」は本当か?【短期連載】フィジカルインターネットの課題を考える(2)

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フィジカルインターネット実現の必要性として挙げられる積載効率の低下だが、これは本当なのだろうか?「フィジカルインターネットの課題を考える」連載第2話では、本問題を検証しよう。

EC注文の増加が輸送リソースに与えた影響

 5年に1回調査される物流センサス(第10回全国貨物純流動調査)を参照しながら、積載効率の真実を探っていこう。

 なお、最新のデータが2015年調査のものであり、やや古いことはご容赦いただきたい(本来、2020年に実施される予定であったが、新型コロナウイルスの影響で2021年に実施され、その報告は2023年に発表される予定)。

 世間では、輸送リソース圧迫の原因をECビジネスの拡大による個人宅向け宅配便の増加に求めることが多い。これは間違いではないが、皆が思うほど大きなインパクトを与えているかどうかは疑問である。

 物流センサスによれば、営業用トラックによる輸送全体の中で、重量ベースで0.06%、件数ベースで5.8%に過ぎない。2015年の調査以降、コロナ禍でEC利用が増えたにしても、重量ベース・件数ベースいずれも全体で言えば限定的なものと考えられる。

 さらに言えば、世のすべての運送会社、倉庫会社などがECを手掛けているわけではない。この数値だけを見れば、ECの拡大がそのまま輸送リソース全体の圧迫につながるほど、大きなインパクトのあるものではない(ただし、物流センサスでは、ECの動向を捉えきれていない危惧があることは付記する)。

 余談だが、ECプラットフォーマー各社は、ラストワンマイル配送と呼ばれる個人宅配送の自前化を検討している。Amazonが、Amazon版Uber Eatsとも言える、個人事業主への業務委託による軽貨物配送「Amazon Flex」の拡大を進めているのは、その一例だ。

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