交通系「ネーミングライツ」はなぜ失敗するのか? 話題の東武×モス「なりもす駅」から考える
ネーミングライツ、特に交通関連のものは金銭の多寡だけで成功・不成功は決まらない。権利の取得企業が地元企業であることがやはり望ましいのか。
東武鉄道とモスバーガーがコラボ
東武鉄道は3月8日、東上線の成増駅(東京都板橋区)の駅名標や南口の駅名表示を「なりもす」駅へと改称した。成増駅は、大手ハンバーガーチェーン・モスバーガーの1号店が出店した(1972年6月)地として知られ、今回の取り組みは同店が開業50周年を迎えたことを記念したもの。駅名改称は東武鉄道とモスバーガーがタッグを組んだイベントで、駅名変更はあくまでも一時的な措置にすぎない。
駅名を私企業に販売・貸与することはネーミングライツといわれる手法で、近年に目立ってきている。今回の“なりもす駅”は、これまでのネーミングライツと比べても格段に期間が短く、イベント的な色合いが強い。ネーミングライツは3~5年というサイクルで契約することが一般的だ。
ネーミングライツは駅名だけではなく、スポーツ施設などのスタジアムをはじめ図書館やイベントホールなどの公共施設や道路・橋梁といった交通インフラにも及ぶ。
国内初の導入は2003年
ネーミングライツの導入は小泉純一郎内閣(2001~2006年)の構造改革路線と連動した動きでもあり、小泉内閣が民間活力の導入を推奨したことで年を追うごとに増えていった。特に、その象徴とされたのが2001(平成13)年にオープンした味の素スタジアムだ。
東京都調布市に立地する同スタジアムは、2003年にネーミングライツを導入。大型公共施設では国内初のネーミングライツ導入ということで、その成り行きは全国の自治体関係者から注目された。
味の素スタジアムは5年契約で年間12億円のスポンサー契約を締結。2期目は6年間で14億円の更新となった。味の素スタジアムの名称は、導入から間もなく20年を迎える。それだけに、周辺住民やスポーツファンにも定着しているといっていいだろう。