交通系「ネーミングライツ」はなぜ失敗するのか? 話題の東武×モス「なりもす駅」から考える
失敗に終わったケースも
実際、箱根ターンパイクと同時期に道路のネーミングライツ導入が検討されながら、失敗に終わったケースがある。それが、新潟県内の奥只見シルバーライン(総延長22.6km)と魚沼スカイライン(同18.8km)のふたつの県道だ。
新潟県は箱根ターンパイクの先行事例を確認しながら、道路へのネーミングライツ導入を模索していた。しかし、手を上げるスポンサー企業は現れず、ネーミングライツの導入は白紙に戻された。
新潟県の県道へのネーミングライツ導入は、ネーミングライツ黎明期だったために設定価格の相場感が不明で、それを手探りしていた。ゆえに高額に設定されたことが失敗理由と分析されている。しかし、それだけが失敗の理由ではないだろう。
ネーミングライツで成功した磐田市
新潟県に続いて、静岡県磐田市が公道にネーミングライツの導入を試みた。
磐田市は、2009(平成21)年に2本の市道へネーミングライツを導入すると発表。2本の市道は約480mと約600mで、両市道の周辺には大型商業施設のららぽーと磐田が立地する。市内では交通量の多い道路だけに、ネーミングライツによる販売価格は5年間で約150万円と約210万円に設定された。
このネーミングライツには、不動産大手でららぽーとを運営する三井不動産と磐田市に隣接する袋井市に本社を置くタクシー事業者のさくら交通がパートナーに選ばれている。
磐田市は、この1件でネーミングライツのノウハウを学び、2019年に開業した東海道本線の新駅・御厨駅の駅前広場でもネーミングライツを公募。こちらは、地元企業でJリーグのジュビロ磐田の母体企業でもあるヤマハ発動機がパートナーとなった。
磐田市が道路関連でネーミングライツを成功させているが、これは成功している数少ない事例にすぎない。実際、全国では道路関連のネーミングライツは苦戦している。
大阪府大阪市は、2010年に市道に架かる歩道橋のネーミングライツを導入すると発表。ネーミングライツ導入により、歩道橋や市道・信号などの建設費・維持費などを捻出するとした。
しかし、初年度に手を上げる企業はなく、ネーミングライツは失敗に終わった。その後も繰り返しパートナー企業を募集し、少しずつ浸透してきているが、それでも成約しているのは100か所以上ある歩道橋のうちの半数に満たない。