交通系「ネーミングライツ」はなぜ失敗するのか? 話題の東武×モス「なりもす駅」から考える

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ネーミングライツ、特に交通関連のものは金銭の多寡だけで成功・不成功は決まらない。権利の取得企業が地元企業であることがやはり望ましいのか。

ネーミングライツと住民感情

箱根ターンパイク(画像:写真AC)
箱根ターンパイク(画像:写真AC)

 ネーミングライツによるスポンサー契約は、スポーツ活動・文化活動を経済的に支えるという目的が含まれる。それには、長期的な支援が欠かせない。先ほど、ネーミングライツの契約期間は一般的に3~5年と書いたばかりだが、自治体関係者などに話を聞くと、本音では10年間という声が強い。

 ネーミングライツは自社の知名度を広げる企業の広報戦略の一環といえるが、いくら企業が大金を投じているとはいえ、スポンサーが住民やファンの意向を無視して自社の宣伝活動を全面に打ち出せない。そんなことをすれば、周辺住民やファンからはそっぽを向かれる。大金を投じて、評価を下げる逆効果につながりかねない。

 スタジアムや音楽ホールよりも、難しいとされるのが道路へのネーミングだ。国内における道路へのネーミングライツは、2007(平成19)年の箱根ターンパイクへの導入が発端とされる。

 箱根ターンパイクは2007年に東洋ゴム工業とネーミングライツ契約を締結。新たに「TOYO TIRES」ターンパイクの愛称が付された。東洋ゴム工業とのネーミングライツ契約が切れた2014年には自動車メーカーのマツダと契約。道路名は「MAZDA ターンパイク箱根」となった。

 そして、2018年には空気圧縮機・真空機器・塗装機器などメーカーであるアネスト岩田と契約。新たに「アネスト岩田 ターンパイク」となった。ネーミングライツの導入によって、箱根ターンパークの愛称は目まぐるしく変わっている。

 箱根ターンパークは民間事業者が所有・管理する私道だったため、ネーミングライツ導入のハードルは低かった。箱根ターンパイクが契機となり、以降は道路へのネーミングライツ導入が相次いでいく。

 スポーツ施設や文化施設といったハコモノでも、その名称が頻繁に変わることに住民やファンは違和感を覚え、嫌悪感を募らせる。それでもスタジアムやホールは、多くても月に1~2回程度しか足を運ばないから許容範囲といえるかもしれない。毎日のように使う道路は、そうはいかない。箱根ターンパイクでは5年に一度、スポンサー契約が更新され、そのたびに新しい名称が付与されてきた。

 これではドライバーが道路名を覚えられないし、ナビや地図、道路標識や案内板などに旧名が残っていたりして混乱を起こしかねない。周辺住民にとっても、目まぐるしく名称が変わると愛着が湧きづらい。

 道路は日常的に使用される交通インフラでもあるが、なによりもライフラインでもある。それだけに、周辺住民たちの視線はスタジアムやホールのそれよりもシビアになる。

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