バスを走らせるだけでは、もう生き残れない【短期連載】希望という名の路線バス(1)

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バス業界における異業種参入は、経営の多様化と地域コミュニティーの活性化をうながす。北海道拓殖バスと東急バスの取り組みを紹介する。

東急バス、貨客混載成功の理由

東急バス(画像:写真AC)
東急バス(画像:写真AC)

 筆者が勤務する東京都市大学(世田谷区)と同じ東急グループに属する東急バス(目黒区)は、横浜市青葉区の路線バスで「貨客混載」を実施している。貨客混載とは乗り物の空きスペースなどを利用して貨物を輸送することだ。

 同社は2022年4月から、「た41系統」(たまプラーザ駅~虹が丘営業所)の路線において、貨客混載を積極的に推進している。路線沿いのパンショップで製造されたパンをたまプラーザ駅まで運び、別の支店のスタッフに引き渡すという仕組みだ。これにより、パンショップのスタッフはパンを別の支店まで運ぶ手間が省ける。

 たまプラーザ周辺は住宅街で坂道も多いことから、自家用車の利用もそれなりに多い。そのため、バスドライバーという“運転のプロ”がパンを運ぶことで、輸送時のリスクも軽減できる。バス事業者にとっても、わずかながら収益源を確保できる。双方にとってWin-Winなシステムだ。現在は、沿線の製麺所から麺を虹が丘営業所まで運び、営業所の窓口で新鮮な麺を販売している。

 2023年6月には、運営事業者として、電動アシスト自転車のシェアサイクリングのサービス「ハローサイクリング」に参画した。路線バスを降りた後の「ラストワンマイル」をどうするかは、全国のバス事業者でもよく議論されているテーマだ。東急バスはいち早く行動を起こしたのだ。

 筆者は、東急東横線、目黒線、多摩川線が乗り入れる多摩川駅(大田区)で、鉄道とバスの乗り換えをしている。多摩川駅には自転車プールがある。自転車がすべて使われているのをよく見かけるし、先日も勤務先の大学の学生たちが利用しているのを見た。

 最近は、ドライバー不足などの要因でバスの路線数も減り始めている。そのため、最寄りのバス停から自宅までの移動手段に不安を抱える人が増えている。それを意識したビジネスだ。沿線の地域モビリティを考える、よい新規ビジネスだ。

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