わずか5年で引退! 鹿児島「電気バス」に見る、深刻な車両問題と普及への高いハードル
電気バス誕生の背景

全国に先駆けて導入された鹿児島県の薩摩川内(せんだい)市の電気バスが、先日引退した。電気バスは次世代バスのひとつとして注目されている。いったいどのような問題があったのか。
同バスの愛称は「こしきバス」。JR川内駅と川内港の間を1日4往復する予定で、2014年4月に導入された。車体は韓国ファイバーHFG製で、三菱重工業製の電池を搭載。1回の充電で通常は80km、冷暖房使用時は40km走ることができるとされた。総事業費は車両本体価格約8700万円のほか、設備費など合計約1億円だった。
車両の外装と内装の一部は、工業デザイナー・水戸岡鋭治氏が担当した。災害時の電源車としても利用できるとされ、実際に市の主催した総合防災訓練にも登場している。
全国に先駆けて電気バスが導入された背景には、市の街づくり方針があった。薩摩川内市は九州電力の川内原子力発電所と川内火力発電所が立地し、九州のエネルギー拠点として発展してきた。このうち川内火力発電所は2022年4月での廃止が予定されており、これに代わって、市では太陽光・風力による発電、蓄電器やエネルギーマネジメントシステムの導入を進めていた。
現在、市内にはENEOSグローブ薩摩川内太陽光第1・第2発電所や柳山ウインドファーム風力発電所、小鷹水力発電所が立地。市の総合運動場では屋根に設置された太陽光発電システムが稼働しており、余剰分は九州電力に売却している。
川内駅前の広場にも太陽光と風力発電の設備があり、駅の照明などに使われるほか、防災拠点としても整備されている。また、同市の離島・上甑(かみこしき)島では2017年、市と住友商事、日産自動車の3者で日産自動車の商用タイプ電気自動車「e-NV200」を40台導入するプロジェクトが開始されている。
さらに、スマートハウスや超小型モビリティの実証事業、街路灯の発光ダイオード(LED)化など、次世代エネルギーを使った街づくりが市内で行われてきた。電気バスの導入は、この一貫で始められた。