民営化の公約「楽しい旅行をつぎつぎと企画します」は結局、守られたのか?【短期連載】国鉄解体 自民党「1986年意見広告」を問う(3)

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国鉄分割民営化後、JR各社は観光列車や募集型企画旅行を通じて観光振興に努めている。しかし、鉄道の定期利用は若年層の減少で低迷しており、通勤利用者の増加が必要だ。

JR四国の分担率と課題

JR四国のウェブサイト(画像:JR四国)
JR四国のウェブサイト(画像:JR四国)

 JR四国が管轄する高知県を含む四国4県(一部の路線は岡山県へ乗り入れ)は

・急速な人口減少
・モータリゼーションの進展
・高速道路網の発達

などを受けて利用が伸び悩んでいる。輸送人キロがピークの21億2300万キロに達した1991(平成3)年以降減少傾向にあり、活性化が急務である(「四国における鉄道ネットワークのあり ネットワークのあり方に関する懇談会II 事務局資料」)。

 現状でも、四国4県間の公共交通による移動では、JRの分担率は23.5%にとどまる(2022年度「旅客地域流動調査」)。また、高知市に限れば、JR(鉄道)の分担率はわずか1%にすぎない(「高知市の地域公共交通の取組について」)。

 JR四国の「2023年度 期末決算について」(2024年5月8日公表)によると、鉄道運輸収入223億円のうち、定期収入は

「20.5%」

である。四国の日常の移動手段は自動車が主流であり、JR四国の定期利用者の大半は高校生以下の生徒である。そのため、通勤利用者を増やすのは容易ではない。筆者(大塚良治、経営学者)が取材で訪れた香川県のある進学校では、高校時代にJR線で通学をしていた若い女性教師が、

「鉄道で学校へ通っていた生徒も免許を取得すると、多くが自動車利用へ移行してしまう。私もそのひとりであり、今は毎日車で通勤している」

と話していた。

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