民営化の公約「楽しい旅行をつぎつぎと企画します」は結局、守られたのか?【短期連載】国鉄解体 自民党「1986年意見広告」を問う(3)

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国鉄分割民営化後、JR各社は観光列車や募集型企画旅行を通じて観光振興に努めている。しかし、鉄道の定期利用は若年層の減少で低迷しており、通勤利用者の増加が必要だ。

観光列車の地域活性化

伊予灘ものがたりの車内。2022年11月12日撮影(画像:大塚良治)
伊予灘ものがたりの車内。2022年11月12日撮影(画像:大塚良治)

 JRグループでは、募集型企画旅行以外でも、乗車券に加えて追加料金を支払うことで乗車できる観光列車が各地で運行されている(ただし、追加料金を必要としない観光列車を運行しているJR四国予土線の例もある)。

 例えば、JR四国の「伊予灘ものがたり」は、マスメディアが実施した観光列車ランキングで複数回

「第1位」

に輝いている。伊予灘ものがたりは、松山~伊予大洲・八幡浜間を予讃線伊予長浜経由で結ぶ。予讃線向井原~伊予大洲間(伊予長浜経由)は2023年度の1日平均通過人員(輸送密度)が321人と低く、JR四国が路線のあり方について自治体との協議を希望する3路線(予讃線伊予長浜経由のほか、予土線および牟岐線阿南~牟岐間・牟岐~阿波海南間)のひとつに入っている。しかし、

・高野川~伊予長浜で見られる瀬戸内海
・伊予長浜~伊予大洲間で並行する肱川と山あいを縫うようにして走る車窓風景
・大正時代に開業し開業後100年を超えた伊予長浜~伊予大洲間の鉄道資産
・青春18きっぷのポスターに採用された下灘駅

などは文化的な資産といえる。伊予灘ものがたりの魅力は予讃線伊予長浜経由の素晴らしい車窓風景や鉄道資産をゆったりした列車のなかから食事をしながら楽しめる点にあるが、前出のJR四国の川崎氏は

「伊予灘ものがたりの人気は、沿線住民などによるお手ぶりやおもてなしにより支えられている」

と付け加える。2024年6月24日に青森県弘前市で開かれた、弘南鉄道大鰐線を中心とした公共交通のあり方について沿線住民の意見を聞くワークショップのなかでは

「大鰐線が走る風景は文化になっており、絶対に残ってもらいたい」(ABA青森朝日放送のウェブサイト)

との意見も出たとの報道もあった。

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