「池袋暴走事故」を再考する! 高齢者に運転免許証返納を“強制”するのは本当に合理的なのか

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「高齢者の事故率は低い」と主張しても、高齢者の交通事故に対する現役世代の見方は変わらない。本稿では、池袋暴走事故で議論された運転免許証の年齢制限を実施することの経済的・社会的コストの意義を問う。

公共交通利用の経済的側面

自家用車と公共交通機関を利用した場合の比較(画像:内閣府)
自家用車と公共交通機関を利用した場合の比較(画像:内閣府)

 高齢者が一定の年齢に達した場合、運転免許証を強制的に返納させる制度が導入されれば、高齢者は移動に公共交通機関を利用することになる。

 この点について、内閣府「高齢者の交通安全対策に関する調査(令和4年3月)」の自家用車と公共交通機関を利用した場合の経済的負担を参考にした。以下が概要である。

・居住地は都市部、地方都市、過疎地の3タイプを想定
・年間移動距離は1500km、4000km、7000kmの3通り
・普通自動車と軽自動車を比較
・自家用車の車両代と各保険料、維持費(各税金・車検代、ガソリン代、消耗品費)
・公共交通機関は鉄道、バス、タクシーを利用した場合を検討し、機会損失も加味する

 自家用車の維持費に駐車場代が加味されていないのは、内閣府「平成30年高齢者の住宅と生活環境に関する調査結果」によると、高齢者の約8割が持ち家(駐車場あり)であるためだ。公共交通機関の機会損失とは、自家用車に比べて待ち時間や徒歩時間が失われることで、「ロスした時間を高齢者が働いた場合の平均賃金」で検討している。

 画像は年間移動距離4000kmを想定しており、機会損失が大きい地方や過疎地ほど負担が大きいことがわかる。例えば、バスを利用する過疎地では、移動時間のロスに年間12万8720円、待ち時間のロスに年間115万8480円が加味される。

 過疎地における公共交通機関の年間利用料金と自家用車(軽自動車)を単純に比較すると、

・公共交通機関(バス利用):16万1200円/年
・自家用車(軽自動車):22万5824円/年

である。

 公共交通機関を利用した方が安い(71%)。一見すると、公共交通機関の利用が増えることは、歩く機会にとってもよいことのように見える。また、年間移動距離が1500kmでは、機会損失を加味しても都市部や地方都市では経済的負担が少なく、啓発活動によって運転免許証の自主返納が促進されるとしている。

 しかし、そう単純な話ではない。筆者も高齢者の移動支援に携わっているが、複雑化した公共交通機関を利用することへの“心理的ハードル”が一番大きいのだ。

 その結果、外出する機会が減り、介助が必要になりやすい。このことは、国立長寿医療センター予防老年学研究部が行った研究結果からも裏付けられる。

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