「ヘルメット」で済むなら警察いらない? 交通事故防止で本当に必要なのは「自転車レーン」だ

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2023年4月1日から、自転車に乗るときのヘルメットの着用が努力義務となった。しかし、ヘルメットを着用すれば本当に事故は減るのだろうか。

ヘルメット着用努力義務の開始

自転車用ヘルメット(画像:森口将之)
自転車用ヘルメット(画像:森口将之)

 2023年4月1日から、自転車に乗るときのヘルメットの着用が努力義務となった。

 これまでは13歳未満の子どもが着けるよう、保護者たちへの努力義務があった。それが全年齢に広げられた形だ。

 理由について警察庁が公表した2022年の交通事故分析資料では、ヘルメットを着用していない場合、事故にあったときの致死率が

「約2.6倍」

になることなどを挙げている。

ヘルメット着用で事故は減るのか

環状7号線の自転車レーン(画像:森口将之)
環状7号線の自転車レーン(画像:森口将之)

 驚いたのは努力義務となった4月1日以降、自転車事故のニュースを多く見るようになったことだ。

 象徴的だったのが4月9日、京都府京田辺市の自転車道「木津川サイクリングロード」で起きた自転車同士の正面衝突事故だ。ヘルメットなしの男性が死亡したのに対し、 ヘルメットを着用していた女性は命に別条はなかったという状況で、努力義務となって初の死亡事故だったこともあり、多くのメディアで報じられた。

 これ以降もしばらくは、ヘルメット未着用の自転車利用者が関わった事故のニュースが多く見られた。衝突した自動車側の過失が明らかであるにもかかわらず、

「ヘルメット未着用ばかりを強調する」

報道もあった。

 ここまで読んできた人の一部は、すでに疑問を抱いているだろう。ヘルメットを着用すれば事故は減るのかと。もちろんそうではない。

 警察庁の2022年の統計でも、自転車乗車中の死者数は年々減っているのに、自転車対歩行者の事故による歩行者の死傷者数は横ばいであることも示されている。

 ここから推察できるのは、自転車のための独立した走行環境、つまり

「自転車道や自転車レーンを増やす」

ほうが、事故防止には効果があるということだ。

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