飛行機と船のいいとこ取り? JAL・ヤマトがラブコールを送る、“水上飛行機っぽい”革新的な乗り物をご存じか

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海上輸送といえば船――。そんな従来のイメージを変える新たな輸送手段が登場している。見た目はジブリ映画『紅の豚』で登場した水上飛行機と似た乗り物、シーグライダーだ。

JAL本気の投資

日本航空イノベーションファンドの仕組み(画像:JAL)
日本航空イノベーションファンドの仕組み(画像:JAL)

 シーグライダーは、沿岸都市間のスムーズな地域輸送を目指す。大量の貨物の輸送に適しているのは船だが、港に到着した後は貨物を鉄道や飛行機に載せ替えて、各地に運ぶ必要がある。そのためには港と線路や駅、空港などの設備・施設は近い方が都合がいい。

その点、既存の港湾施設を利用するシーグライダーなら、新たな建設・維持コストが不要で、大幅なコストカットができるとリージェントは主張する。

 この新たな輸送手段に目をつけた日本企業のひとつがJALである。2023年1月、JALのベンチャー部門・日本航空イノベーションファンドはリージェントに対して、これまでに

「4500万ドル」(約67億円以上。2023年10月20日時点)

の出資をしてきた。さらにJALはシーグライダー機体の販売代理店としての機能も持つ。

 なぜJALはこれほどまでにシーグラライダーに注目しているのだろう。念頭には脱炭素への対応がある。

短距離便の温室効果ガス排出削減

飛行機(画像:canva)
飛行機(画像:canva)

 世界の二酸化炭素排出量の約2.5%を占めるとされる航空輸送。欧州委員会の予測によると、航空業界の需要次第では、21世紀なかばまでの温室効果ガスの排出量は2005年比で

「300%」

以上増加する可能性もあるという。

 そこで航空業界はこれまでに、

・持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進
・機材/装備品等への環境新技術の導入
・空港施設/空港車両の二酸化炭素排出削減

の取り組みなどを進めてきた。

 とりわけ影響が大きいのは、航続距離600mile未満の短距離便の対策である。航空会社が排出する二酸化炭素排出量の2割近くは、短距離便が占めているからだ。そこで沿岸都市間の輸送に強みを持つシーグライダーが注目されることになった。

 すでにリージェントは

・モクレレ航空(米国)
・サザンエアウェイズエクスプレス(同)
・FRS(ドイツ)
・オーシャンフライヤー(ニュージーランド)

など、世界各地の顧客に400機以上のシーグライダーを販売している。

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