京都市の「観光公害」が止まらない! ホテル客室稼働率“8割超”の揺るがぬ現実、JR西日本の対策は効果あったのか?
嵯峨野線の混雑解消めど見えず

外国人観光客の殺到で混雑が続く京都市で、JR西日本や京都府タクシー協会が緩和策を打ち出している。観光客が最も増える紅葉時期を前に効果が出ているのだろうか。
京都市下京区のJR京都駅。嵯峨野線の電車が着くと、狭いホームが人であふれかえる。ほとんどが京都市を代表する観光地・嵐山に最寄りの嵯峨嵐山駅から乗り込んだ観光客だ。10月末の週末、JR西日本や京都府タクシー協会が混雑緩和策を実施する京都市の現状を見ようと、現地を訪れたが、大混雑に出迎えられる形となった。
JR西日本はコロナ禍で減便されたダイヤを見直さず、臨時列車の運行や車両の増結で対応してきた。10月下旬からは上下合わせて
1日当たり
・平日:18本
・土日祝日:20本
に増発、平日60本、土日祝日57本で車両の増結数を増やしている。効果のほどを確かめるため、正午過ぎの園部行き8両編成の快速列車に乗車した。
最も混雑が少ない先頭車両に乗車したが、到着から2、3分でクロスシートの座席は満席状態に。発車時刻には通路も大きな荷物を抱えた外国人観光客で埋まった。隣に座った府中部に位置する南丹市の公務員(49歳)は
「臨時列車や車両の増結をしてもあまり効果を感じられない。毎回乗るのが嫌になる」
と苦笑する。
増便ダイヤの難題

満員電車のような状態で列車が嵯峨嵐山駅に到着すると、乗客のほとんどが下車し、嵐山方面へ向かう。その一方で、嵯峨嵐山駅では券販機の前に10m以上の行列ができていた。
嵐山の中心に位置する渡月橋まで歩いた。歩道は観光客でいっぱいになり、なかには車道を歩く人も。竹林の道も人力車が大群となって歩く観光客を交わすのに苦労するコロナ禍前と同じ光景が見られた。土産物店の女性(21歳)は
「秋になって外国人観光客が増えている。今年の紅葉時期はとんでもない状態になるのでは」
と目を丸くしていた。
嵯峨野線はコロナ禍前にも混雑が問題視されていた。しかし、京都駅近くに単線区間が一部残り、大幅な増便ダイヤの編成が難しい。しかも、コロナ禍の最中に旧式車両を引退させたため、嵯峨野線に適した車両のやり繰りに苦労している。
これを受け、京都府の西脇隆俊知事はJR西日本京滋支社にダイヤ見直しを求める要望書を提出した。京滋支社は「利用状況を見ながら対応する」と答えたが、JR西日本の長谷川一明社長は記者会見で
「時間帯や曜日によって利用の変動が大きい。これ以上の増発は車両の新造が必要」
と前向きな意向を示さなかった。