「ナチスは良いこともした」という虚妄 通説「アウトバーン建設 = 失業率低下」もほぼ間違いだった
一般的にナチスが行った「良いこと」を俎上に載せながら、「それは本当に良いことだったのか」を確かめる。アウトバーン、フォルクスワーゲンなどについても言及する。
「アウトバーン」「VW」評価への疑念

それでも、
・アウトバーンをつくって失業率を大きく改善させた
・労働者も買えるフォルクスワーゲンをつくった
といった点は、「良い」と評価したくなるかもしれない。しかし、この両者についても「良い」とはいいがたいという。
まず、アウトバーンであるが、財政出動を伴う公共事業計画はナチ政権のオリジナルではなく、その前のシュライヒャー政権で計画されていたことである。
アウトバーン自体も、ナチ政権が考え出したものではなく、ヴァイマール時代に
「民間組織によって構想」
され、一部で実現していた計画を引き継いだものだった。
ヒトラーはこれを全国路線網へと拡大し、1933年9月の起工式で建設労働者とともにくわ入れを行うことで、ナチ政権の行う国家的プロジェクトだと印象付けた。ただし、壮大な計画になったこともあり、ナチ体制のもとで完成することはなかった。
それでも、「アウトバーン建設を行うことによって失業率を低下させた」とはいえそうであるが、実はそうでもない。
確かにナチ政権は世界恐慌後に最大600万人いたという失業者を大きく減少させた。1933年1月にヒトラーが政権を掌握してから、失業者は1934年に272万人に、1936年に159万人に、1937年には91万人にまで減少し、ほぼ完全雇用の状態になっている。
ただし、アウトバーンの建設に従事したのは、1934年に3万8000人、最大でも1936年の12万4000人にとどまる。政府全体の雇用創出政策でも、生み出せた雇用は1935年までで50万人程度だと推定されている。