ドイツのアウトバーンは「時速無制限の区間」があるのに、なぜ安心して走れるのか?
ドイツのアウトバーンはスピードを出しているにもかかわらず、安心して走れる。なぜ安全なのか、その理由をひも解く。
時速無制限区間があるアウトバーン

筆者(武田信晃、ジャーナリスト)は先日、初めてドイツの高速道路「アウトバーン」を数日間走る機会を得た。
アウトバーンは時速無制限区間がある高速道路として世界で知られているが、実際に走ってみると、スピードを出しているにもかかわらず思った以上に安心して走ることができた。
その実体験から、今回はなぜ安全なのかを書いてみたい。
日本・ドイツ、死亡事故レベル大差なし

さて、
「時速無制限区間がある = 死亡事故が多い」
というステレオタイプは、わりと一般的かもしれない。実際はどうなのか。交通事故に関する客観的な数字を見てみよう。
内閣府の「交通安全白書」2022年版によると、10万人あたりの交通事故死者数(2020年)は
・日本:2.7人
・ドイツ:3.3人
と、ドイツがわずか多い。ただし、自動車走行10億kmあたり交通事故死者数で比較すると、
・日本:5.26人
・ドイツ:4.03人
とドイツの方が低い。
もちろん事故を起こせば、高速走行ゆえにドイツの方が重傷を負ったり、死亡したりする確率が上がるのは自明だ。ただ、飛行機は「世界一安全な乗りもの」といわれているが、事故になればほぼ死亡することを考えると
「高いスピードで走る移動体はダメなのか」
と問題を突きつけられる。
刃物は本人の使い方次第で、便利な道具にも凶器にもなるのと同じで、車もドライバーが正しく乗れば、高速走行でも大きな問題は起こりにくい……と、ドイツの数字が証明している。