「ナチスは良いこともした」という虚妄 通説「アウトバーン建設 = 失業率低下」もほぼ間違いだった
一般的にナチスが行った「良いこと」を俎上に載せながら、「それは本当に良いことだったのか」を確かめる。アウトバーン、フォルクスワーゲンなどについても言及する。
ドイツ経済を立て直したという評価も

今回紹介する小野寺拓也・田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(岩波書店)は、すでに話題を集めている本で、このタイトルを耳にしたことがある人も多いだろう。
タイトルから「ナチスは「良いこと」もしたのか?、いや、そうではない」という反語の命題を読み取り、
「ナチスの行った「絶対悪」の前では、いかなる行為も「良い」とは認められない」
という主張を行っている本だと想像する人もいるかもしれないが、ポイントはタイトルに「検証」という言葉が入っているところにある。
本書は、「ナチスも「良いこと」をした」というときにあげられる行いを俎上(そじょう)に載せながら、「それは本当に良いことだったのか」ということを確かめていった内容になる。
ナチスの行ったホロコーストや障害者の「安楽死」などが、「悪い」ことであることには議論の余地はないが、一方で、ナチスが数々の「先進的」な施策を行い、それによってドイツ経済を立て直したという評価もある。