京急の三浦半島「延伸計画」 2016年“凍結”も、鵜呑みにしていいのか? 一部で囁かれる巧みな戦術説

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京浜急行電鉄は三崎口駅のさらに南に線路を延ばす構想を悲願として来たが、2016年に突然“凍結”してしまった。これを額面通りに受け取ってもいいのか。

短縮・廃止そして凍結

油壷エリア(画像:(C)Google)
油壷エリア(画像:(C)Google)

 半ば惰性となった格好の延伸計画も2000年代半ばに突如転機が訪れる。

 2005(平成17)年に同社社長に就任した石渡恒夫氏は、同年10月に油壺までの延伸計画の免許廃止を国交省に提出したのである。今後は少子高齢化で沿線人口はさらに減り、鉄道収入、特に安定収入である通勤・通学の定期券収入も漸減する。危機感を強める石渡氏は、

・横須賀周辺での大規模宅地造成
・葉山マリーナ買収
・京急油壷マリンパーク地区再開発

の“3点セット”を中核に、鉄道事業以外での収益拡大に大きくハンドルを切る。石渡氏には実現しそうにない延伸計画はむしろ「お荷物」と映ったのだろうか。

 とはいうものの、鉄道事業法の改正で免許復活(事業許可の最申請)は以前より簡単になったため、沿線開発の進捗(しんちょく)をにらみながら再申請を図る、と同社は再挑戦もにじませる。

 少々ややこしいが、廃止とはいうものの、簡単に取得できる免許をいったん返上しただけで、延伸計画自体はどっこい生きている、との意味のようだが、何とも気になる「含み」である。

 だが約10年後の2016年3月には、廃止した延伸計画と沿線の大規模宅地開発の“凍結”を決意する。いわば損切りで、2016年3月期(2015年度)に、関連する不動産の評価損など約180億円のマイナスを一括計上した。

 この結果、当初連結ベースで約130億円の黒字を見込んでいたが、一転約40億円のマイナス決算に陥る事態に。同社にとって最終赤字は1949(昭和24)年の上場以来初の経験である(2020年度はコロナ禍の影響により連結ベースで250億円規模の最終赤字)。

 ただし業界内では

「業績が好調で体力が十分なうちに“膿(うみ)だし”を図った経営判断はある意味、正しい。もう数年先送りしていたらコロナ禍で身動きが取れなかった」

と評価する声も少なくない。

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